会社における火中の栗とは「責任」のことをあらわします。会社にはかぶっていい「責任」と、かぶってはいけない「責任」があります。火中の栗をイメージしやすいように、いくつかのヒントを紹介します。
●会社に落ちている火中の栗
会社にはいたるところに栗が落ちています。くれぐれも落ちている「火中の栗」には気をつけてください。「え?責任をかぶるってことは、火中の栗を拾えってことじゃないの?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。責任をかぶらなければいけない場合、すでに火中の栗となっているケースが多いかも知れません。
火中の栗を拾わないのであれば、結局なにも責任をかぶらないのと同じ状態といえます。責任をかぶらないと「あいつは逃げている」と悪い噂を流されてしまいます。そしてあなたは考えるはずです。できることならば「軽い責任」のほうがいいなと。本当の火中の栗は、もうはじけるしかない状態ですから拾ってはいけません。あなたが拾わなければいけない栗は、火中といっても救いようのある火中の栗です。
火中の栗は吟味しなければいけません。ここが難しいところなのですが、火中の栗の中には、うまくいけば美味しく化ける栗も確かに存在します。が、それはあくまで「うまくいけば」の話です。この「うまくいった姿」が見えないのに栗を拾っても、サル・カニ合戦のサルよろしく、あなたが大やけどを負うだけになりかねません。
責任をかぶるときは、必ず落としどころを想定してかぶってください。この大原則さえ守っていれば、かぶった責任が大きな火に燃え上ってしまうことはそうそうありません。
では、「美味しい栗」とはどのような栗でしょうか。赤字続きで利益が回収できず潰れそうなプロジェクトや、代金未収の案件はありませんか?既に、火中の栗となって、火を噴いていますが実は美味しい栗であることが少なくありません。
ここで最も重視されるのは、代金の回収や、顧客との関係維持、撤退に向けての事務作業などになります。プロジェクトの成功ではなくクロージングです。
これまでも八方手を尽くしてきたわけで、正直そんなもの誰がやろうと、成果を改善することはできないでしょう。ならば、被害が最小な落としどころに収めるよう努力した方が遥かにマシです。
そして実際に撤退となりますが、評価は落ちるどころかグングン上がります。そもそも瀕死状態ですから成果は求められません。やるのは事務処理や調整だけですから火事場の処理がうまい人という印象になるのです。さらには、火の中に飛び込む度胸のあるヤツ、という評価も得られます。ポイントは「撤退寸前で手を差し伸べる」ことです。
●栗拾いのポイント
事業を成功させるための努力は大変だしライバルも多いでしょう。しかし、敗戦処理なら、評価も上がりやすい。トラブルの最終処理を仕上げることで、会社も助けて、上司も助けて、人望も集まります。これこそが真の栗拾いの役割です。ただし、火消しが上手くいかない場合は、批判のほこ先が向かいますから注意が必要です。
尾藤克之
コラムニスト
追伸
アゴラ研究所、Jディスカヴァーによる著者発掘セミナー(6/14)は好評により満席となりました。次回は7月下旬の開催を予定しています。多数のお申込有難うございました。