政治家は歴史の審判を恐れよ


野田前首相がブログで、安倍首相の増税再延期をこう批判している。

安倍総理の自民党総裁としての任期は18年9月までです。自分の任期中は不人気な政策は実施しないということです。そして、長期金利をマイナス圏まで沈ませ、国が借金をすればするほどもうかる状況をつくり、財政規律を大きく緩めた黒田東彦日銀総裁の任期は、18年4月までです。

2人とも日本の財政と金融を滅茶苦茶にして、逃げようとしています。その後、誰が立て直しできるでしょう。私は、社会保障を充実・安定させ、財政健全化を実現するためには、国民に土下座してでも予定通りに消費税を10%に引き上げるべきだと思います。それしか、日本と若者を救う途はありません。

民進党はすでに増税延期法案を出しているので、これは前首相の個人的見解にすぎない。しかし今回の増税は、民主党政権のとき決めたものであり、それを岡田代表みずからくつがえすのは背信行為だ。「自公か民共か」という対立には、争点が何もない。有権者は、何を基準にして投票すればいいのか。

岡田氏は1993年に、小沢一郎氏とともに憲法改正を掲げて、新生党の結成に参加した。野田氏も同じ選挙で、日本新党から初当選した。しかし小沢氏はその後、失敗を重ねたあげく、今はミニ政党の一員だ。その原因は政治理念を捨てて、数合わせに走ったためだ。

このように政治家が信念より選挙を優先し、「政治屋」に堕落したあげく消えてゆくのを、われわれは何度も見てきた。国民から批判されるのは政治家という職業の宿命なのかもしれないが、30年もたつとおのずから歴史の審判が下る。

岸信介は60年安保の悪役だったが信念を貫き、今では大宰相と評価されている。麻生財務相は、増税延期に反対して安倍首相に「宰相になるか、ポピュリストとなるかだ」と迫ったそうだが、安倍氏は後者を選んだ。彼は政権の長さでは祖父を抜いたが、歴史には何も残さないだろう。歴史に名を残すのは野田首相だと、私は思う。