ポスト西洋世界はどこに向かうのか



夏の参院選は、争点らしい争点が何もない。与野党ともに消費税の増税は再延期するくせに「社会保障の充実」を約束する。違いをしいていえば、野党が「安保法の廃止」というナンセンスなスローガンを掲げているだけだ。

しかし新興国の台頭で、単なるグローバル化ではなく、地政学的なバランスが大きく変わり始めている。かつては西洋が経済的にも政治的にも圧倒的に優勢で、冷戦の終焉とともに「世界はフラット」になるようにみえたが、今では逆に非西洋的な価値観との対立や紛争が目立っている。

東アジアでは、「経済大国」にふさわしい軍事的なプレゼンスをもとうとしている中国の動向に警戒が必要だ。もっと大きな脅威はイスラムの「神政政治」で、西洋でいうと近世の宗教戦争のような状態が続いているが、宗教と政治が一体なので解決は困難だ。中南米ではポピュリズムと独裁政権が混在し、経済発展とともに混乱は増している。

ではこの”No One’s World”(原題)で秩序が保てるのか、という問題について著者は悲観的だ。歴史を振り返れば、西洋が世界を支配したのはここ300年ほどの短期間で、今後はまた地政学的な混沌に陥るおそれが強い。そのリスクに日米同盟だけで対応できるとは思えないが、「平和憲法」が役に立たないことは明らかだ。その意味で、争点のない日本の政治は危険である。