今週から来週にかけて三つの大きなイベントがあります。アメリカのFOMCが14-15日、日銀の政策会議が15-16日、そして英国のEU離脱を問う国民投票が23日であります。その内容次第では様々な影響が出てきますので予習の意味も兼ねてチェックしておきたいと思います。
まず14-15日のFOMCですが、これはイエレン議長が数か月以内の利上げを暗示していたものの、5月の雇用統計が失望的な結果となったことで現在、6月に利上げをするだろうと見込む専門家は4%に留まっています。それまでは6月の利上げは確率5割程度まで上がっていたことを踏まえれば雇用統計の与える意味合いがいかに大きいかお分かりただけると思います。
利上げは10中8,9ないと思っていますが、注目すべきはFOMCのステートメントとイエレン議長の会見の内容です。会見は7月にはありませんから今回、議長がどのようなコメントを発するのか一応、耳を傾けておく必要がありますが、個人的にはおおむね想像がついています。「月々の統計には若干の振れ幅が出るが全体論として景気が着実に改善しているかを見極めたうえで今後の利上げを決めていく」というスタンスかと思います。
ただし、本気で利上げをするならば7月が最後のチャンスかもしれません。8月はお休みでその次の9月は記者会見のある会合ですが世の中は大統領選で盛り上がり、トランプ氏が「イエレン議長クビ、利上げはすべきではない」とワンワン吠えると思いますのでFOMCとして動きにくくなると思います。
次に日銀ですが、こちらはもっと手詰まりのように感じます。緩和をしてもそれが効果をもたらさない状況が生じている今、中途半端なサプライズぐらいではやらないほうがまし、とも思えるからです。さらに三菱東京UFJの国債のプライマリーディーラーからの離脱検討という反乱があったことは総裁としてはショックだったと思います。
一方で参議院選を控える中、政府としては経済の状況を少しでも改善しておかねばなりません。その代表的指標が株価と為替、そしてそれに短期的に刺激を与えられるのは日銀の金融政策であることも確かです。政府と日銀は独立関係でありますが、そうはいっても根でつながっていることも事実。参議院選の投票は7月10日のようですから、日銀が定例会議で何か打ち出せるのは今回がラストチャンスになります。
FOMCにしろ日銀にしろその判断材料として最大の懸念は英国のEU離脱の行方でしょう。フィナンシャルタイムズの最新の世論調査は残留45%、離脱43%ですが、ほかの調査機関では全くさかさまの結果が出ています。つまり、想定以上の拮抗具合であります。私は保守的な残留派が大差をつけると予想していましたがどうやらはずれたようです。
私の判断ミスは保守が残留ではなくて離脱が保守だという点でしょう。中高年層と労働者層が離脱を支持するのは移民、難民などがEUという枠の中で押し付けられ、自国のアイデンティティが守られないことに業を煮やしたということでしょうか?
私もかつて英国にいたことありますが、基本的に英国人は自分の世界(テリトリー)を崩されたくないという強い信念を持っています。カナダも英国連邦ですから多くの英国ブラッドの人がいますが、カナダの根底を作っているのはこのブリティッシュ スピリットであります。それはアメリカと世界一の長さの国境を接しているにもかかわらずメンタルには案外遠い関係にあることが英国と欧州大陸との関係に似ています。
もしも離脱となれば英国、EUのみならず、計り知れない不確定要素が世界を駆け巡ることになり、金融市場はマヒ状態になる公算があります。ドルと円、それ以上に金が買われることになりますが、ドルと円はシーソー関係ですからドル円相場は相殺のベクトルが働くとみています。
また、それこそリーマンショック級の衝撃が時間をおいて出てくるかもしれません。一つはイギリスに本社を置く金融機関がアイルランドやフランスなどにその本店を移すことでロンドンシティの機能低下、もう一つはEUの内部崩壊を促進させること、欧州各地の極右政権に油を注ぐことになるなど計り知れない事態すら考えられます。
そうなるとアメリカFRBは利上げどころか利下げを検討せざるを得なくなるとみています。日銀は手詰まりで政府の判断を待つことになりますが、参議院選期間に入っており、政府対応が後手になりかねないでしょう。
国民投票までの10日間、その行方を巡って金融市場は荒れ、ボラタリティが急上昇するケースは頭に入れておいたほうがよさそうです。今年の二大イベントである英国の国民投票、アメリカ大統領選挙のまずは第一幕の最後の直線コースに入ってきました。シートベルトは相当しっかり締めておいたほうがよさそうです。
では今日はこのぐらいで。