人を怒る時

「文藝春秋」創設者で小説家の菊池寛さんは、「人を怒る時は、先に悪い方を言って後に良い方を言え」と述べられています。之は当たり前の話で、此の順番以外には有り得ません。

人を怒るということは基本、その人の何かが悪いから怒るわけで、先ずは何ゆえ怒っているのかその理由をクリアに示さねばなりません。怒った結果、プラスに働かず寧ろマイナスに働くのであれば、怒ってみても仕方がないかもしれません。怒っている理由が怒られている方に理解され、納得が得られるよう丁寧に伝えねばなりません。様々な言い方を用いて工夫しながら、説明することも大切です。

また怒ったらそれで仕舞ではなしに、今後二度と同じような問題が生じぬよう、よく念押しをすることも求められます。また念押しした後は、何時までもぐずぐず言ってみても仕方がないわけで、その話は之以てストップとしなければなりません。

3年前の10月『怒るべきタイミングで、怒るべき内容を、怒るべき方法で怒る』と題したブログを書きましたので、御興味がある方は読んでみて下さい。

それから怒る前には、本当に怒りを向けるべきものか否かを自分で相当考えねばなりません。言うまでもなく自分が間違っているケースも有り得るわけで、そこの所がピンぼけにならないよう意識することも大事です。

また「義憤…道義に外れたこと、不公正なことに対するいきどおり」という言葉がありますが、正義や大義が踏み躙られたことに対して怒る人もいれば、そうした類とは無関係に私的な事柄で怒るような人も多数います。

後者は、自分の好き嫌いや主義・流儀に反するといったことで怒りの感情が生じます。それはやはり、修養を以て直して行かねばなりません。他方で義憤による怒りは、時として持たねばいけないものだと思います。

最後にもう一つ、怒る時は人前であろうが何であろうが、怒る方が良いと私は考えています。出来たら人前で怒った方が良いのではとさえ思います。何故その方が良いかと言いますと、怒る内容そのものの明確な理由を他の人にも、分からせる機会となるからです。

「周りの見ている前で怒ったら、面子が潰れるから駄目だ」とか「人前でなく、こそこそと怒る方が良い」とかと言う人もいますが、上記の通り余計なことは考えずに怒るべきを先ず怒り、その後きれいさっぱり何事もなかったようにするのがベターでしょう。

冒頭挙げた菊池寛さんの言葉に還れば、何も怒るタイミングで「後に良い方を言え」というよりも、寧ろ人の良い所は良いと認めた時にタイムリーにそれを伝えれば良いわけです。「後に良い方を言え」といった、取って付けたような態度を示す必要はありません。

但し怒るべきを怒るとしても、その人が翌日まで落ち込まないよう、フォローしてやることはあっても良いかもしれません。

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