IEA月報6月号:FT弱気、WSJ強気?

昨日発表されたIEAの6月月報(Oil Market Report)の受け止め方が、FTとWSJで正反対になっている。

昨夜「IEAがリバランスは年内に達成すると言っているのに油価は下落している」といニューステロップを見て、月報の「ハイライト」を読んでみた。筆者には「リバランスは年内に一度達成するが来年前半には再び供給過剰となる、さらに重くのしかかった在庫の圧力はしばらく消えそうにない」と読めたので、このテロップには疑問を感じた。

今朝、流れているFT “IEA: Oil market will not find sustained balance until 2017” (June 14, 2016 4:58pm) とWSJ “Global oil markets to balance out, IEA says” (June 14, 2016 10:59pm) を読み比べてみた。ロンドンとニューヨークの時差を考慮に入れると、FTの記事はWSJの2時間ほど後に掲載されていることになる。

両記事の受け止め方は、記事のタイトル通りだ。意訳すると次のようになる。

FTは「IEA:持続可能なリバランスは2017年まで達成しない」となっており、WSJは「リバランスが達成できるとIEA報告」となっている。まさに弱気vs強気の構図に読み取れる。

ハイライトを読んでみると次のようになっており、FTの記事の方が正確だということがわかる(短いものなので、ぜひ原文をお読みください。他にも興味深い点が多々あります)。
・2016前半は、これまでの予測以上に供給が阻害され、需要が堅調だった。
・2016年通年の需要予測を前回より10万B/D上方修正し、+130万B/Dとみる。
・2016年の非OPEC供給は、米国の▲50万B/Dを含め、▲90万B/D。ただし2017年は+20万B/D(OPEC供給量は、通例通り、予測していない)。
・これらの結果、2016年末には需給がバランスする。
・だが、2017年前半には供給が若干過剰となり在庫が増え、後半に在庫が減少となる。

WSJの記事には、なぜか2017年前半に「若干供給過剰となり、在庫が積み上がる」という点が書かれていない。この点を無視すると、年末にはリバランスが達成できる、ということにだけ焦点が当てられ、「強気」となるのだろう。

結論として言えるのは、市場は正しく反応しているということだろうな。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年6月15日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。