手詰まり感あった二つの金融政策会合

15日にアメリカのFOMCが定例の金融政策会合を、16日には日銀の政策決定会合を終え、それぞれ何もしないという発表をしました。時差の関係で実際には9時間程度の差で両方が発表するという珍しいケース、そして市場関係者からは「何もない」のはわかっているけれど気になって仕方がない会合でありました。

終わってみて感じたのは両会合とも「冴えなかった」ということでしょう。いや、むしろ批判の声が出ていることに注目でかつての中央銀行の威厳はどこに行ったのか、という気がします。ただし、今回は来週23日に控える英国のEU離脱を問う国民投票があることで対策を温存した可能性がないとは言いません。ちなみに昨日、その英国でも定例の中央銀行政策会議が行われていますが、現状維持となっています。

可能性としては各国中銀ともいざ離脱となり、市場が荒れ狂うようならば臨時会合を開催し、対策を打つ準備をしているとは思います。特に日本においては円が大暴騰する可能性があり、しかるべき対策がとれるのか要注目となります。

昨日、日本時間の11時半過ぎに突然円が1円ほど急騰しました。私もその時ボードを見ていましたが「あれ、日銀の政策発表はこんなに早くないはず」と思い、不思議でありました。案の定、先読み派が日銀発表より15分ほど早く大がかりな買い仕掛けをしたようであります。日中のこの時間ですら円がピンポン玉のごとく動くことに恐怖感すら覚えています。しかもその後も円高トレンドは全く止まらず、その後、103円台半ばまでつける円高となりました。。

今回は指摘したとおり、逃避マネーがうろついており、金もNY市場で一時1315ドルと大きく上昇し、世界中で波浪警報が出ているといえるでしょう。

さて、失望感を誘ったのはアメリカFOMC。政策据え置きはともかく、今後の利上げペース、インフレ見通しなどがほとんどリバイスされていません。いったいどういうつもりなのかはっきり言って「手腕の欠如」に陥っているように見えます。

元ピムコの社長のエルイレイン氏も「連中にはビジョンがない」とこき下ろしています。言っていることとやっていることがバラバラでそれでも年内あと2回程度の利上げを見込むということをこの時点でさらに上書きする意味は市場との対峙なのか、学者が市場を見下しているのかのどちらかと言われても仕方がありません。

一方の日銀も同様です。今回、大方の予想通り政策据え置きとなりましたが仮に何か対策を行うとしても相当手詰まり感があることは事実です。マイナス金利は反対者が多いこと、国債の買い入れ増はもはや国債市場をつぶすことになりかねないこと、ETFなどの買い入れも市場の不公平感を増長する可能性があります。

では円は今後、無対策のまま行くところまで行くのでしょうか?為替介入などの直接的対策は為替操作国としてアメリカから激しく叩かれます。ここにきて財務省と中央銀行の機能を含めた潜在的リスク対応とその能力に改めて注目が集まることとなるでしょう。

100円という心理的節目を抜けると国内経済への影響、金融、株式市場への影響のほか、訪日外国人の落とすお金がガクッと落ちる可能性を秘めています。安倍政権になって踊った円安株高はリバーサルの道をひた走っています。更にマイナス金利の影響で多くの銀行の収益に懸念が出ています。収益を国債運用に頼っていた地方銀行などは17年3月期の利益は二ケタ減が見込まれています。放置すれば相当悲惨な状況があり得ますので注意をしておいた方がよい気がします。

自分の身は自分で守るということでしょうか。投資家にとっては胃が痛い一週間となりそうです。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 6月17日付より