各政党参議院選挙公約若者度評価『ワカモノのミカタ政党はどこだ!』
参院選の選挙公約が揃い始めた。
「18歳選挙権」実現以降、多くのマスコミはこの投票率の問題や18・19歳の投票行動、またそれによる選挙結果の変化に注目した。「18歳選挙権」による初の選挙とのなる参院選を目前に控え、18・19歳を中心に若者の動向が注目される選挙ではあるが、注目すべきは若年投票率ではない。
こうした取材を受けるために話してきたことがある。
2007年から世代間格差の問題を指摘し、様々な政策提言を行ってきた。
※参照:「世代間格差ってなんだ」(PHP新書)
2015年には若者の声を政党公約に反映することを目的に「日本若者協議会」を立ち上げ、自民・民進・公明・おおさかの各党と政策協議を続けてきた。
すでに各党からも我々の提言を受けて政策に反映したとの発信もあるが、今回の参議院議員選挙は、18歳選挙権による初めての国政選挙ということもあり、各政党とも公約についても若者に対して、一定の意識をした公約になってきている。
いよいよ明日、日本で初めての「18歳選挙権選挙」とも言える参議院議員選挙が公示となる。
今回は、こうしたタイミングで、自民・民進・公明・おおさか・共産といった政党の参議院選挙公約について、
『ワカモノのミカタ政党はどこだ!』と各政党参議院選挙公約若者度評価を作成して紹介したいと思う。
すでに6月15日に先述の日本若者協議会とワカモノ・マニフェストの共催で、『参議院選挙直前!18歳選挙権サミット~ワカモノのミカタ政党はどこだ!~』を行った。各党代表の国会議員から各党の公約について紹介してもらった上で、各分野の有識者たちを交え、若者目線で各党公約から「ワカモノのミカタ政党」を考えた。この様子はニコニコ動画で生中継も行ったので動画を見てもらうこともできる( http://live.nicovideo.jp/watch/lv265909518 )。
また、本日6月21日は、代表理事を務めるNPO法人Rightsと松下政経塾が協力し、お笑い芸人であり東大院生でもある、たかまつななさんや、日本一の選挙プランナーとして政治業界では知らない人のいない三浦博史さんなどをゲストに、『「若者×政治」フォーラム ~参院選前夜!18歳選挙権は激戦区を制するのか~』( https://www.facebook.com/events/1649178368739943/ )を行う。
是非、こうした場も、新たなに選挙権を持つ18・19歳はもちろん、30代くらいまでの若者、さらにはその上の世代の皆様にも今回の選挙を考える、また、今回の選挙での投票先を考える参考にしてもらえればと思う。
※データは日本若者協議会とワカモノ・マニフェストに各党が回答したものと公約から作成
与野党主要政党が公約でこぞって「被選挙権年齢引き下げ」!
そんな中でも参議院選挙における選挙公約で象徴的なのが、自民始め主要政党が公約でこぞって「被選挙権年齢引き下げ」を掲げたことだ。
被選挙権年齢引き下げについては、これまでも『自民党が安倍総理への提言にまで載せている二の矢『被選挙権年齢』引き下げの実現性』( http://blog.livedoor.jp/ryohey7654/archives/52050652.html )などでも紹介してきた。
この「被選挙権年齢引き下げ」について2011年以降、国会で発言した件数を調べたところ、最も多かったのが、18歳選挙権実現の中心であった船田元 議員(自民)と、そしてなぜか国会議員でもない高橋亮平 参考人の6回だった。いかに国会の中でこれまで議論されてこなかったテーマであるかがここからも分かるはずだ。少なくとも主要政党でこの被選挙権年齢引き下げを公約で掲げるような政党は1つもなかった。
それが今年に入って一変した。
こうしたプロセスについては、『若者が与党を動かした!~自民党、参院選公約に「被選挙権年齢引き下げ」盛り込みへ』( http://blog.livedoor.jp/ryohey7654/archives/52055378.html )、『若者たち自身が動かした!「若者担当相」「被選挙権」等が公明党参院選重点政策に!』( http://blog.livedoor.jp/ryohey7654/archives/52053190.html )なども見てもらえればと思う。
<若者の政治参加>本気で若者の声を聞こうとしているのはどこか?
まず注目したいのが、「若者の政治参加」の項目だ。
とくに先述の被選挙権年齢引き下げに関しては自民・民進・公明・おおさか・共産のすべてが明記した。
・自民:「被選挙権年齢の引き下げについて検討します」
・民進:「選挙に立候補できる年齢を一律5歳引き下げる。(衆議院は20歳から、参議院は25歳から)」
・公明:「被選挙権年齢の引き下げをめざす」
・おおさか:「18歳以上に被選挙権付与」
・共産「被選挙権年齢のすみやかな引き下げ」
今回の参議院選挙の公約の特徴は、この被選挙権年齢引き下げに限らず、多くの政策で、各党の政策の差がほとんどなくなってきている。ということにある。
細かい部分での公約表記の違いの見分け方についても紹介しておくと、引き下げの想定年齢を「18歳」としている政党と、「20歳」からとしている政党があること、参議院や知事などの年齢規定と分ける必要があるのか、などが一つの論点になる。こうした設定にも各党の特徴や背景も透けて見えるのが面白い。ただ、こうした年齢規定の「好き嫌い」だけで選ぶのは短絡的で、それ以前に、引き下げを断言している政党と、「めざす」「検討」としている政党があることも注目してもらいたい。当事者たちがどういう思いで公約の文面にしたかは別にして、うがった見方にもなるが、「めざす」という表記は結果がどうであれ「めざせば」、公約達成になるし、「被選挙権年齢の引き下げについて検討します」は、そもそも「引き下げるべき」とすら言っておらず、「引き下げるべきか、引き下げるべきでないか」を「検討」さえすれば公約達成ということになる。
こうしたいわゆる「てにおは」などによって七光りにした文面を官僚が作る文面に例えて「霞が関文学」などと言ったりするが、まさに「永田町文学」を読み解く力が、若者たちにも求められることになる。
こうした視点で、このほかの政策も見ていってもらうと面白くなるのではないだろうか。
若者の政治参加分野の公約については、もう一つ新しい提示が、選挙に限らない若者の直接参画の促進を明示した政党が出てきたことだ。
・公明:「若者政策を担当する大臣・部局」・「審議会等への若者の登用」・「「若者議会」の開催を推進 」
公明しか提示していないということはあるが、若者の参画現場を選挙だけだと位置づけるのではなく、行政など政策形成の現場や、地方自治体においても必要だと位置づける政策が主要政党の公約に明示されたことには大きな価値がある。
この他については、各政党によって違いが見える。
自民党と共産党が供託金の緩和について、おおさかと自民がネット投票に関してなどが明記されたほか、18歳選挙権の実現によって関心も高まっている政治教育について明記しているのは民進党だけ、また高校しえの政治活動の禁止に触れたのは共産党だけだった。
・自民:「選挙における供託金のあり方やインターネット活用の可能性等についても検討します」
・民進:「主権者教育を高校だけではなく、小・中学校から積極的に行う」・「学校現場での「模擬選挙」等の実施について支援する」
・おおさか:「スマホ投票(ネット投票)」
・共産:「供託金を大幅に引き下げ」・「高校生の政治活動の禁止・制限に反対し、主権者としての自由を守る」
こうした政党の特徴についても見てもらえればと思う。
文字数の関係で、今回のコラムでは若者の政治参加に限ったが、本日6月21日に行う『「若者×政治」フォーラム ~参院選前夜!18歳選挙権は激戦区を制するのか~』( https://www.facebook.com/events/1649178368739943/ )では、このほかの政策についても紹介する予定なので、こうした場にも足を運んでもらえればと思う。
高橋亮平(たかはし・りょうへい)
中央大学特任准教授、NPO法人Rights代表理事、一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、千葉市こども若者参画・生徒会活性化アドバイザーなども務める。1976年生まれ。明治大学理工学部卒。26歳で市川市議、34歳で全国最年少自治体部長職として松戸市政策担当官・審議監を務めたほか、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員等を経て現職。世代間格差問題の是正と持続可能な社会システムへの転換を求め「ワカモノ・マニフェスト」を発表、田原総一朗氏を会長に政策監視NPOであるNPO法人「万年野党」を創設、事務局長を担い「国会議員三ツ星評価」などを発行。AERA「日本を立て直す100人」、米国務省から次世代のリーダーとしてIVプログラムなどに選ばれる。テレビ朝日「朝まで生テレビ!」、BSフジ「プライムニュース」等、メディアにも出演。著書に『世代間格差ってなんだ』、『20歳からの社会科』、『18歳が政治を変える!』他。株式会社政策工房客員研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員も務める。
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