文系ビジネスパーソンのスキルは秀逸だった

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皆さまは、日本の大学における文系と理系の割合をご存知でしょうか。「平成25年度大学・大学院の学校基本調査」(総務省統計局)によれば、大学生の総数は約290万人です。大学院生は約26万人です。文系が約60%、理系が約25%、その他(家政、保健、芸術、体育など)が約15%です。日本では圧倒的に文系が多いのです。就職後、文系の場合は営業や管理部門(経理、人事、企画、総務、法務など)に配属されることが多いように思います。

●「ひと皮むける」ってどういうこと

いま、貴方が管理職だとします。人事制度が規則性の高い年功序列で無い限り、管理職に昇格した何らかの理由が存在するはずです。「安定的に高い成果を計上していた」「新規事業をゼロベースで立ち上げた」「事業を建て直し利益の最大化を実現した」「適任者がいないため気がついたら管理職になっていた」「上司に引き上げられて管理職に就任した」など、様々な理由があることでしょう。

そして、その理由には、なんらかのエピソードがあると思います。営業マンであれば、目標値(ノルマ)が設定されます。景気や市場環境の影響をものともせず、安定的に高い成果を計上し続けるには独自のノウハウがあると思います。上司に引き上げられるにしても、上司との関係性を構築するノウハウが存在するはずです。このようなノウハウを「ひと皮むけた経験」といいます。

平成26年版労働経済の分析」(厚労省)には、「ひと皮むけた経験」として次のことが記されています。1位から5位までを紹介します。

1位.尊敬する上司・先輩と一緒に働いた経験
2位.プレッシャーの大きい仕事をこなした経験
3位.「期待」や「信頼」している旨を提示してもらった経験
4位.ビジネスの失敗、キャリア上の挫折などの経験
5位.スケジュールがタイトな仕事をこなした経験

1位は「尊敬できる上司・先輩と一緒に働いた経験」ですが、単に一緒に仕事をしただけでは「ひと皮むけた経験」にはなりません。2位の「プレッシャーの大きい仕事をこなした経験」も同様です。あくまでも仮説ですが、自らが親しんだ仕事を単に繰り返すのではなく、より高い成果をあげることが前提となるはずです。以上を踏まえて考察します。

まず、1位~5位の経験から、非凡な「対人影響力」を持ち合わせていることが推測できます。対人影響力は、個人がほかの人に対する影響を反映して形成されていくものです。組織または他者を認めることから生み出されていくものであり、言い換えると、自分だけの地位、名誉、利益のみの追求で対人影響力を行使することはできません。

また、「ひと皮むける」ためには、社会的・組織的に利益をもたらすことが前提です。組織内での血で血を洗う競争や、組織全体の利益を損ない個人の利益を追求しても評価はされないでしょう。組織へのコミットが高いこと、組織人として生きることをいとわない姿勢が評価をされて昇進昇格に影響を与えていたと考えることができます。

1位~5位はすべて仕事に起因することです。仕事を円滑に進めるには一定の「対人影響力」が必要です。また、管理職に登用する上司の存在が散見されます。部下を引き上げる上司の存在はキャリア形成に大きな影響を与えていたものと推測できます。

●自分自身の歴史を整理してみる

いま紹介したような「ひと皮むける経験」は、本来なら多くのビジネスパーソンにとって役に立つものですが、情報をキャッチアップする機会が限定されます。私はこのような経験を紹介する手段としていくつかの方策があると思っています。

1つは学会での発表です。しかし、学会はコネがないとなかなか機会は与えられません。学術論文にまとめる場合には、主査、副査の指導が必要です。一般投稿でも学会のルールに則って書き進めなければいけません。しかし掲載される保障はありません。

もう1つが出版です。ビジネス書とは、知識や経験などを噛み砕いて一般の人に伝えるためのツールです。既に専門家として活動をしている、士業、コンサルタント、セミナー講師などの仕事にたずさわる人のなかには出版実績がある人が少なくありません。

そして最近、増えているのがビジネスパーソンの出版です。冒頭で説明しましたが日本の約60%は文系です。しかし文系の評価は芳しくありません。「理系出身者には技術があるが文系出身者には技術がない」と、文系出身者は具体的なビジネススキルを持ち合わせていないと思われることもあります。

しかし、ビジネスにはどのような業務にもそれぞれノウハウというものがあります。ノウハウという「ひと皮むけた経験」を持つ人は圧倒的に文系出身者です。「ひと皮むけた経験」を持っている人が、出版という手段を通じて読者にメッセージを投げかけているのです。

実際に、ビジネスパーソンのベストセラー作家は少なくありません。「ひと皮むけた経験」をお持ちの文系の人は、この機会に出版を検討されてはいかがでしょうか。

尾藤克之
コラムニスト

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