EU離脱とトランプ旋風、「自国第一主義」の先には?

田原 総一朗

6月24日、たいへんなニュースが世界を駆け巡った。イギリスがEUを離脱するか残留するか、その賛否を問う国民投票をおこなった。結果は「離脱派」の勝利だった。そして、EU離脱という結果を受けて、キャメロン首相は辞意を表明している。

僕は、まさか離脱はないだろうと考えていた。いや、僕だけではない。多くの人が同じように、「まさか」と思っていたのではないだろうか。EUから離脱すべきと考える人は、移民や難民が自分たちの仕事を奪うと恐れていた。そして、そう感じているイギリス国民が、想定以上に多かったということなのだ。

当然ながら、日本にも強い影響がある。EU離脱が決まった24日当日は、日経株価は1万5000円を割り込み、急激な円高が進んでいる。

では、フランスやドイツ、オランダといった欧州各国はどうするのか、イギリスに続き、EU離脱への動きが広がるかもしれない。アメリカでも影響は出るだろう。トランプ氏のアメリカ大統領選の勝利を後押しするのではないかとも、僕は考えている。

イギリスのEU離脱は、いわば「イギリス・ファースト主義」の勝利だ。ほかの国をかまっている場合ではない。イギリスという国とイギリス国民の利益を最優先させようということなのだ。

このような動きは世界中で進んでいる。アメリカでトランプ氏が支持を広げているのもそうだ。「メキシコとの国境に壁を築け」という発言もそうだし、移民受け入れにもあからさまに反対している。トランプ氏こそ、まさに「アメリカ・ファースト主義」者なのだ。

アメリカ、イギリスといった世界を代表する2大国で、いま「自国ファースト主義」が強くなっている。非常に危険なことだ。このような流れが広まったとき、いったい世界はどうなるのか。

世界はまさに、大きな岐路に立っている。そして、一方の行き先には「第3次世界大戦」があるだろう。僕たちは、この最悪の選択だけは回避しなければならない。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2016年7月4日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。


 

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