【映画評】死霊館 エンフィールド事件

ロンドン北部に位置するエンフィールド。シングルマザーのペギーと4人の子どもたちは、正体不明の音や不穏な囁き声、人体浮遊など、数々の不可解な現象に苦しめられていた。アメリカを中心に、さまざまな事件を解決してきた心霊研究家のエドとロレインのウォーレン夫妻は、家族を救ってほしいと助けを求められる。恐怖の元凶を調査するため、英国を訪れた夫妻は、一家の次女ジャネットにとりついた霊と対峙し、怪奇現象の元凶を探ろうとするが、それは彼らの想像を超える恐ろしいものだった…。

1970代に活躍した実在の著名な心霊研究家ウォーレン夫妻の実体験に基づく大ヒットホラー「死霊館」の続編である「死霊館 エンフィールド事件」の舞台は、怪奇ホラーの宝庫である英国。だがこのエンフィールド事件は、ロマンや耽美とは無縁だ。霊は椅子やタンスを激しく動かして家族を攻撃するなど、やたらと行動的でにぎやかしい。11歳の次女ジャネットが「私の家から出ていけ!」としゃがれた老人の声で怒りだし「私はビル・ウィルキンス、72歳だ」と名乗るあたりから、にわかに不穏な空気が漂い始める。

心霊現象を信じない人々の懐疑の目や偏見と闘いながら、ウォーレン夫妻は次第に核心に近づくが、ジャネットに取りついた老人の霊と、ロレインが見、エドが絵に描いた不気味な悪霊とがリンクしたとき、終盤のどんでん返しへとなだれこむという趣向だ。ジェームズ・ワン監督の恐怖の演出が意外なほど正統派なのは、時代が70年代ということもあるのだろう。科学技術や最新テクノロジーは登場しないが、キャラクターたちの心理描写は丁寧だ。特に、決して望んではいなかった特殊な能力を受け入れるには、自分を信じてくれる人が必要だというテーマは、ただ怖がらせるだけの残酷描写満載のホラーとは一線を画すもので、エドとロレインの夫婦の絆にもつながり、感動的でさえある。

エンドクレジットに、事件と当事者の記録写真と、映画のキャストを並べて紹介するスタイルが、これが実話だということを改めて示していて背筋が凍った。エンフィールド事件は、史上最長期間続いたポルターガイスト現象として心霊史に残る悪名高い事件で、膨大な記録が残っているとのことである。

【65点】
(原題「THE CONJURING 2」)
(アメリカ/ジェームズ・ワン監督/ヴェラ・ファーミガ、パトリック・ウィルソン、フランシス・オコナー、他)
(家族愛度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年7月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。