依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク --- 田中 紀子

寄稿

先日、高知東生さんに対する、テリー伊藤さんの発言について、私のブログがヤフーニュースに流れ、多くの関係者の皆様方から、激励のメッセージを頂きました。

テリー伊藤さんは依存症についてコメントしないで

また、こういった問題は、テリー伊藤さんに限ったことではなく、今の日本のマスコミ全体に言えることであり、依存症問題に関わる関係者、及び当事者や家族は皆憂いており、改善して欲しいと願っていると、様々な方々が発信されているのも目にしました。

実は、この度そういった発信をされている先生方や、長年この問題で活動をされて来られた皆様方に助言を求めた所、
皆様、快く力を貸して下さり、話し合ううちに「依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク」を立ち上げ、依存症報道の改善を求めていくこととなりました。

詳しくはこちらのHPをご覧下さい。
依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク

HPにも掲載致しましたが、前述のテリー伊藤さんの発言に対しても、正式にこのネットワークで抗議文も出しました。

確かに、マスコミ報道には目に余るものがある、でも、それに対して私たちも声をあげることを恐れたり、また抗議の申し入れなどを躊躇してきた所もありました。依存症者が何かを言えば返り打ちにあい、傷つくことも多々あるからです。

でも、偏見に満ちた報道を、垂れ流しにされることは、何の役にも、誰のためにもなりません。

依存症者とその家族の人権は奪われ、益々声があげにくくなるだけです。
私たちだって、就労し、税金を納め、年金を支払い、子供たちを育てといった、社会に対する義務を果たしているにも関わらず、困った時には、行政や、医療、福祉といったサービスに繋がることすらできません。

偏見に満ちた報道により植えつけられたイメージから「こんなことを他人に相談したら、社会から抹殺される」と、恐怖が先立ち「誰にも知られてはならない」「誰にも相談できない」と、ひたすら家族の中で問題を隠そうとしてしまいます。私も、もちろんそうでした。

けれども依存症は進行性の病気ですから、どんなに隠そうとしても問題は益々悪化し、ついには家族の中だけでは抱えきれない問題となり、時には周囲の人たちも巻き込む大問題となってしまいます。

すると今までも可能な限り、当事者も家族も、この問題から抜け出そうと努力を重ね、苦しんできたにも関わらず、「甘えている」「根性がない」「親の育て方が悪い」「愛情が足りない」など、周囲から様々なバッシングを受けることとなり、その上、道徳的優位性を抱えた人たちから、間違ったアドバイスが垂れ流され、傷つけられた上に、問題は一向に解決しないという悪循環になっていました。

この認知が進んでいない、依存症という病に対し、一般の皆さんが悪感情を抱くことも、マスコミが徹底的にバッシングしたくなることも、理解できなくもありません。人は分からないことに対し、拒絶反応を示すか、自分の理解の範疇に落とし所を見つけようとするものです。

けれどもそうすることで、問題は益々大きくなり、その結果、依存症者は就労できなくなり、社会保障費が増大したり、医療費がかさんだり、はたまた治安が悪化していったのでは、ツケは私たちだけでなく、バッシングしている皆様にはね返ってしまうことも、よくご理解頂きたいのです。

依存症は、回復できる病気です。
適切なサポートがあれば、回復し続け、社会でやり直しがいくらでもできる、病気なのです。
ですからマスコミ各社には、回復にスポットをあて、早期に介入できるような社会づくりに是非ともご協力頂きたいと思います。

そして私たちも、理解がすすむような手間暇を惜しまず、そして理解される日まで、バッシングを恐れず、発信して参りたいと思います。

私たちの理念と目的にこんな一文を入れさせて頂きました。
「報道の責任を問うことが目的ではありません。マスメディアが「情報の架け橋」として機能し、世の中の依存症問題が改善されていくことを目指して、私たちの実感をもとに声を上げていきたいと思います。」

私たちの切実な願いです。


編集部より:この記事は、一般社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2016年7月13日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。