バンクーバーの主要ホテルの多くは中華系(香港マネーを含む)が所有、ないし融資マネーが流入しているとされています。そして中華系企業の間で激しい競争が繰り広げられています。Aホテルの成績が好調だと言われればそれよりも資金を投入し、自分の色に染め、俺のBホテルのほうがもっと良いと自慢します。彼らは中国人社会の中で自慢し、多くの人が「Bさんのほうが凄い」と言わしめる為に金を使い、影響力を使い、人を買い、力づくの勝負をします。
ホテルの話題だけではありません。1986年にバンクーバーという「新開地を発見した」香港人はリーカーシンをはじめ香港主要デベロッパーがこぞって上陸するきっかけをつくり、激しい不動産開発競争を繰り広げました。では彼らの生み出したコンドミニアム群はどの程度の評判か、といえば今一つローカル受けしないのであります。理由は様々で、出来が悪いという基本的な問題からアフターサービスが良くないなどでありますが、カナダ人と「価値観のコミュニケーション」が通じ合わないところが最大の問題点ではないかと思います。
これはアジア人と欧米人という仕切りよりも中華系のビジネスに対する姿勢の問題ではないかと思います。中華系にとってビジネスとはマネー、マネー、またマネーであって良い仕事をするとか、新たに価値を生み出すといった「面倒な」ことはせずに模倣でもなんでもよいので目立てばよい、という発想は少なからずとも私には強烈な印象として残っています。シャープを欲しがった鴻海のテリーゴウCEOの目的はシャープの商品開発能力だった点においてなるほど、中華的思想だな、と思ってしまいます。
南シナ海の人工島問題についてハーグ仲裁裁判所が国際法違反であると断じました。報道にあるように中国の完敗であります。もともと海洋進出のために尖閣をはじめ、太平洋に抜けるルートを模索し続ける中で力関係で圧倒できるフィリピンやベトナムが関与する南シナ海に力づくの勝負をかけました。
習近平国家主席はその独裁化を進めるため、国内では粛清を進め、海外ではAIIBなどを通じて世界への影響力を駆使し続けました。巨大国家と巨額マネーというあたかもクジラが小魚を追うがごとく戦法で「俺のほうにすり寄らなければ様々な影響が及ぶ」と脅し続けました。アメリカ企業もネット企業が中国内で自由にビジネスができないなどの弊害が出ていました。
中国の南シナ海進出の理由づけはどう逆立ちしても論理的ではなく、国際法に乗っ取れば完敗することはわかっていたはずです。現代において世界大戦をしていた頃のような領土の奪い合いをする非常識観はどこから来るのか、といえば根本的な中華思想による拡大主義もありますが、過去10数年の世界における中国の立場を中国政府が過大評価したような気もします。
ビジネスを成長させるには何が大事か、といえば従業員に幸せを、という経営者は多いと思います。中華系の企業においてビジネスの目的は金儲けをして、自分が人から「凄い!」と言われることであります。では中国という国家運営において何が最も大事か、といえば民を幸せにすることを置いて他に何を優先するでしょうか?
ところが今の中国の体制は現代版国盗りゲームで習近平氏がいったん勝ち抜いたように見えます。「見える」というのは長く続かないのは目に見えているからです。強固な体制は反体制派を余計勢いづかせることになります。反体制派はそのチャンスを虎視眈々と狙っていることでしょう。その習体制は綻びが目立ち始めました。
中国の鉄道会社、中国南車は北車と合併し、世界最大の鉄道会社となり、海外進出を図ったもののインドネシア、メキシコ、アメリカと大どんでん返しが続き、鉄道輸出事業は完全に行き詰ってしましました。そのすべては着工前の段階で頓挫していますが、理由は中国スタイルの押し付けそのものであります。
AIIBを含め、英国との関係強化でEU圏へのビジネス拡大戦略を狙った中国ですが、同国のEU離脱問題で今後の道筋は全く描けない状態となりました。
ホトケのオバマ大統領を怒らせたのも習近平国家主席との意見の相違からでありました。多くのアフリカ諸国は中国からの金融支援を嬉しく思ったものの中国人労働者が大挙して押し寄せ、中国からの製品を押し付け、多くのアフリカ諸国ではギスギスした関係となっています。
私は「栄枯盛衰」という言葉を時々使わせていただいています。中国については今世紀初めごろから世界の工場としての認知度が高まり、WTOが2005年にクォータ制度(輸入数量割当制度)を撤廃したころから世界の貿易が中国を中心に栄えます。また08年には北京オリンピック、10年には上海万博で世界の目が中国の様々なところにも向けられます。08年のリーマンショックの直後には56兆円規模の緊急経済対策を打ち出し、世界の中の評価はステップアップしました。反対に当時、日本は海外からJapan Passing、Japan Nothingと揶揄されていました。
個人的には10年ごろが中国のピークだった気がします。
何年か前にオリンピック10年後説というのをこのブログで紹介させていただきました。オリンピックから10年前後経つとその開催国は非常に大きなトラブルに巻き込まれるというものです。日本(石油ショック)、韓国(IMF援助)、ソ連(崩壊)、ギリシャ(国家危機)などであります。中国が大きな曲がり角に来ていることは疑いの余地がありません。中国政府が声高々に反発する声はむなしく空に響くだけでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、みられる日本人 7月13日付より