講演中の金光氏。
人は、自分が周囲からどのように思われているのか気になってしまうものだ。これはEQなど心理学で言う「社会における自己意識」というものである。自分の評価や評判に対してどの程度敏感であるかといったことの意識の度合いである。
この傾向が強すぎると、人の目や評価ばかりを気にして身動きがとれなくなる。また、余計に人前で緊張してしまうことに繋がる場合がある。逆に弱すぎると、自分の評価に関心がない、向上心がないということになるので好ましくない。しかし一般的には、意識が過敏で、自分が周りからどう思われているのかが気になってしまう人のほうが多い。
今回は、『人の目を気にせずラクに生きるために黒猫が教えてくれた9つのこと』(大和書房)の著者である、金光サリィ(以下、金光)に、人の目を必要以上に気にしない秘訣を聞いた。金光は、普段、あがり症克服の専門家として活動をしている。
●自分の価値観で生きる
「いま空前の猫ブームが到来しています。これは、猫のように自由奔放な生き方を、今の日本人が望んでいるからだと思います。」(金光)
人の目を気にし過ぎると、自分らしく自由奔放には生きられない。そういう人は、「嫌われてもいい」という気持ちも必要だ。
黒猫には目の前を横切ったら運が悪くなるといった迷信がある。そんなことを気にせず黒猫が好きな人もいる。自由に生きて、好きな人だけに好かれればいい、黒猫のような生き方を目指す考え方を、金光は「黒猫思考」と比喩して呼んでいる。
黒猫思考では、「不必要に人に合わせない」「自分と向き合う」「自分の価値観をつくる」ことが大切だとしている。「人に合わせない」とは、人の顔色ばかりをうかがわないということである。
人に合わせない選択をすれば、自分自身に意識が向かうようになる。それを深めることで自分を理解し価値観が構築されていく。自分の価値観がはっきりすると、他人との価値観に境界線を引くことができ、他人の目が必要以上に気にならなくなる。
●誰に対してもフラットに接する
さらに、どのような人に対してもフラットに接することの必要性を述べている。相手の仕事や立場がどうであっても、自分と相手を対等に扱うようにするのだ。
「年齢や役職が上だから下だからと、相手によって意見を押し通したり、意見を言わなかったり、態度を変える人がいます。相手によって態度を変える接し方は、結果的にブレる自分をつくってしまうことにつながります。」(金光)
人は社会において人間関係でバランスをとっている。上から目線で傲慢であれば、嫌われるか、ゴマをするような人しか周囲に集まらなくなる。媚を売っていれば、相手は自然と偉そうな物言いになるだろう。
「人と人が対等にあるからこそ、良好な意見を交わすことができ、より良い方向へと変化していくことができます。誰にでも同じ態度で接することによって、一貫性のある自分に自信がついてきます。」(金光)
●直接コミュニケーションのすすめ
社会においてグループができると、必ず陰口を言って輪を乱す人が出てくる。では、一例として、自分の陰口を人づてに聞いたらどうすれば良いのか。まず、そのときに改善しなければいけないのは、陰口を言っていた人との関係ではなく、それを良かれと思って自分に伝えてきた人との関係性である。金光は対応方法について次のように述べている。
「伝えた人に、『私のことを思って教えてくれてありがとう。でも今後は、直接本人に言ったほうがいいよと促してもらえる?』と話してください。コミュニケーションは人が絡むほど複雑になります。人づての話にはバイアスがかかるので誤解も生じやすいです。そのようなときには目の前にいる人との関係に注目し、それを改善することが一番です。」(金光)
●本日のまとめ
ジョン・レノンの名言として次のようなものがある。「人の言うことは気にするな。『こうすれば、ああ言われるだろう・・・』こんなくだらない感情のせいで、どれだけの人はやりたいこともできずに死んでいくのだろう。」
最後に、本のあとがきの一部を引用し結びとしたい。「あなたの中の黒猫を呼び覚ますことが必要です。今夜も黒猫たちは、自分の好きな価値観で、自由に楽しく刺激的に生きています。」なお本書には、類書にはないユニークなコミュニケーション術が鏤められている。特にビジネスパーソンの方には参考になることだろう。
PS
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尾藤克之
コラムニスト