<NHK「ファミリーヒストリー」で紹介された「華麗なる鳥越一族」の歴史>
NHK「ファミリーヒストリー」での家系図ねつ造疑惑・・・、しかし問題はそこではない
鳥越俊太郎氏は、2015年7月10日放送のNHKのバラエティ番組「ファミリーヒストリー」で家系図のねつ造疑惑が週刊新潮に指摘されて問題視されたことがあります。
番組内では、祖先は「戦国大名・大友宗麟の家臣、鳥越興膳」と紹介されたこともあり、鳥越氏自身も「関ヶ原の戦いで敗れた側、昔から権力側にはつかなかったんだな」と述べたものの、番組終了後に鳥越家18代当主(鳥越俊太郎氏と家系の繋がり無し)の鳥越光が番組内容はねつ造であると指摘し、番組内容の信憑性を問われる結果となりました。
その後、朝日新聞でも同様の内容が報道されたことについて、鳥越俊太郎氏は週刊新潮の取材に対し「朝日新聞記者の作文でしょう」「私は家系図については全く関与していません。家系図が間違っていると言われても、『へぇ』と驚くしかないね」とコメントしました。これらを事実とした場合、ねつ造報道問題に巻き込まれた鳥越氏についてはお気の毒なことだったと思います。
しかし、現在、東京都知事選挙に際し、鳥越俊太郎氏が語るべき「ファミリーヒストリー」はそこではありません。鳥越氏が問われるべきは鳥越氏の掲げている政策と自分自身の人生の整合性について、ということになります。
1%の資産家「華麗なる一族」鳥越俊太郎氏が訴える貧困・格差の是正
鳥越俊太郎氏は「貧困・格差の是正に向けて、若者への投資を増やすなど、効果的な対策に取り組みます。」と東京都知事選挙の政策として掲げています。
しかし、鳥越俊太郎氏の家系は「福岡県」でも資産家として知られる「鳥越製粉」(東証一部)の創業家一族です。
実際、鳥越氏は2016年2月16日朝日新聞の取材に「福岡県浮羽郡吉井町(現うきは市)です。町には白壁の土蔵が多いんですよ。かつて酒や油などで富を得た商家の名残だね。穀倉地帯で、祖父は大きな製粉会社の創業者。僕の父親の俊雄は、名家の次男として生まれたんです。」と回答しています。
父・俊雄氏は、京大経済学部卒、病気を患いながらも生家の鳥越製粉の専務を務められた大企業の経営陣の一人であり、慈善活動にも取り組まれた立派な方で、鳥越俊太郎氏は日本有数の資産家の嫡男として生まれたことになります。お母様も東京や大阪にも店を持つ京都の呉服問屋に生まれ、何不自由なく暮らしていた方として、NHK「ファミリーヒストリー」では紹介されていました。
そして、鳥越俊太郎氏自身も高収入の大手マスメディア入社、エリート街道を歩んできた人物です。サンデー毎日編集長を務められた上、テレビ朝日「ザ・スクープ」司会者を務め、退職後は関西大学社会学部教授に就任しています。
朝日新聞取材「私の半生」の中で、お見合い結婚された奥様は「早稲田大学商学部教授で、彼女は5人姉妹の末っ子。姉たち4人は医師やエリート会社員に嫁いでいる名家の方」であることが語られています。お嬢様も清泉女子大学英文学科卒、フランス国立高等演劇院教授のワダ・ユタカに師事し、フランス・イタリア留学の経歴を持つ才女です。現在、お嬢様はタレント活動等を営んでおり、俊太郎氏と一緒にイベントなどにも出演。
筆者は、個人がどのような人生を送って、どのような政治的主張を持っても構わないと思っています。むしろ、生まれてくる家庭は選べませんし、努力の結果として生まれる格差は認められるべきでしょう。
しかし、鳥越俊太郎氏は、東京都知事選挙候補者として「貧困・格差の是正」を訴えるには、ご自身とご家族を含めた人生の履歴書との剥離が激しすぎるように思われます。筆者は「1%の華麗なる一族」の人間が自ら格差を再生産する人生を謳歌し、自分の人生を棚に上げて他人に対して「格差の是正」を訴えることに強い違和感を持っています。
民進党は「貧乏人のこころが分かる大金持ち」の政党?
鳥越俊太郎氏は民進党の推薦を受けていますが、その民進党党首はイオングループ創業家の岡田克也氏です。
岡田氏自身は経済産業省に入省し、国費で派遣されて米国ハーバード大学で学ばれた後、自由民主党から立候補し、その後新生党結成時に自民民主党を離党し、様々な政局を経て、現在は野党第一党である民進党の党首を務められています。
2015年5月26日朝日新聞の報道によると、衆議院議員の資産公開に際し、岡田氏はゴルフクラブ会員権のほか、イオン株12万3000株を保有していることが明らかになった、とされています。同株式の時価総額はおよそ「2億円」程度であると思われます。
参議院議員選挙に際し、民進党も「人への投資、公正な分配、格差の是正によって、一人ひとりの可能性が発揮できる環境を整え、暮らしを豊かにする経済を実現します。」と謳っていましたが、党首自体が格差の固まりのような人物ではないか、と思った国民は筆者だけはないはずです。
東証一部上場会社・創業家の野党第一党党首が推薦する「東証一部上場会社・創業家のエリートジャーナリスト」が「格差の是正」を公約に掲げるというのは何の冗談でしょうか。
ちなみに、民進党・山尾志桜里政調会長は参議院議員選挙に際し、自由民主党の公約に対して「参院選対策のパフォーマンスに走る与党と一線を画し、共生社会の実現に向けた具体策の実現に取り組んでいく」と述べていました。
東京都知事選挙に際し、民進党は「都政の素人・パフォーマー」を連れてくるのは良いですか?大金持ちの候補者を貧乏な人間が担ぐことが彼らの言う「共生社会」ですか?格差問題に関心が高い運動家や共産党の方々が鳥越氏を応援させられることが可哀想だし、大金持ちの選挙をボランティアで手伝う心の葛藤もあるのではないかと思います。
筆者は公開討論会・共同記者会見などを見る限りでは、綿密に準備をされていた宇都宮健児氏のほうがまだ筋が通っていたのではないか、と思います。左派系の候補者としては近年稀にみる論客として興味深い人だったので残念です。7月17日現在、宇都宮氏のTwitterは撤退表明のツイート以来停止したまま、党の都合で不出馬に追い込まれた宇都宮氏の心中をお察しします。
鳥越俊太郎氏は東京都知事候補者として「資産公開」をするべきだ
鳥越氏は公示日直前の出馬記者会見で「公約はまだできていない」という驚くべき発言を行い、7月17日「新報道2001」による公開討論をドタキャン、政策的な議論を避けたと揶揄されています。
今回の東京都知事選挙は舛添氏の突然の辞任とともに、参議院議員選挙直後という特殊条件も重なり、十分な政策議論と人物評がなされないまま突入した選挙戦です。鳥越氏の議論を避ける姿勢は東京都民として非常に残念です。
そして、今回の東京都知事選挙は舛添氏の人物への信頼が失われたことに端を発したものであり、東京都知事選挙の候補者には言行の一致に通常以上に求められるべきです。
そのため、イオン株を大量に保有する創業家の人物が野党第一党の党首として格差の是正を訴えた参議院議員選挙の茶番の焼き直しは容認されるべきではありません。筆者も自民党改憲案には賛同しませんが、東京都知事選挙は大金持ち老人の憲法9条を守りたいという趣味を東京都民に押し付ける場でもありません。
鳥越俊太郎氏は不動産・金融資産、そしてこれまでの所得を含めて東京都民に対して情報公開することを検討されたら良いと思います。米国でも大統領選挙の前に主要候補者は資産公開を行うことが慣例となっています。
小池氏も増田氏も豪邸問題ですっぱ抜かれているため、反権力のスタンスで市民のための取り組まれたジャーナリスト&現在は格差の是正を公約に掲げられている候補者として極めて良いパフォーマンスになることでしょう。
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