第四次産業革命で目指せ、技術的特異点 --- 藤井 善将

私が毎日のように読む人工知能関連記事には、技術的特異点の話題が掲載されている。技術的特異点を簡単に言えば、技術が人間の予想を超える状態のことである。

「人間は人工知能に敗北する。仕事を奪われる」

このような警句が、国際社会全体に広がりつつある。また一方では、人工知能の飛躍的進化が、第四の産業革命として歓迎され、政府が「第四次産業革命」を推進している。

私は現在、人工知能についての研究論文を書いている。Python開発環境上で作動する、国産フレームワークChainerによる数々の実験経験から、人工知能の社会進出を論じたい。

結論から述べれば、人類は人工知能と平和的に共存できる。なぜなら、人工知能は単なる人間知能の模倣にすぎないからだ。エポックメイキングでセンセーショナルなアイデアを思いつくほどの能力と自我が、人工知能に備わっているわけでない。その実態は、単に膨大なデータを数日間かけて学習・分析し、そこから新しいデータを出力しているに過ぎない。私は、人工知能が人間の役に立つことはあっても、脅かすとは考えない。仮に人工知能が人間を脅かす事態があっても、人間はそれを阻止する努力が可能だ。

専門的に言えば、Chainerで実装された人工知能は深層学習を通じて.model拡張子の学習データを生成し、その内容に従って自動画像生成や画像・音声認識、自然言語処理を行う。学習データの生成には、学習対象となるような、数千万にも及ぶ膨大な画像やコーパスとなる文章が必要だ。その学習には優に何十時間、日数にして数日ほどかかる。

人工知能は技術である。技術は意思を持たない。人工知能の弊害は、技術が持っているリスクに過ぎない。むしろ、人類社会の発展のためには、そのリスクを克服し、人工知能の活用に尽力すべきだ。人工知能の活用がもたらす人類社会の発展を、私は第四次産業革命として歓迎したい。

ここで、見出しに「目指せ、技術的特異点」と題した理由を述べる。

シンガポールはシンギュラリティの実現を国策に掲げ、政府主導で次世代の人工知能ビジネスを模索している。日本でも今年IPO(新規上場)となるLINEは、アプリへの人工知能導入を掲げ、7月15日のニューヨーク・終値ベースは時価総額9000億兆円に及んだ。米Google、米テスラ、独フォルクスワーゲン、トヨタ自動車などは自動運転車開発を狙っており、Minecraft内の仮想現実を利用した人工知能実験Malmo Project、レンブラント風の絵画自動生成を試みたThe Next Rembrandtなど、人工知能ビジネスは枚挙にいとまがない。AI関連研究施設の設立や、東京大学がトヨタ自動車、三菱重工、ドワンゴなどから9億円の寄付を受けての産学連携による研究者育成講座を開く点も、学生の私にとっては見逃せない関心事だ。

私は、人工知能と第四次産業革命がもたらす技術的特異点のリスクよりも、そのメリットを評価したい。技術的特異点のメリットとは何か?それは、「人間の予期せぬ科学的進歩」が見込めることだ。

たとえば、人工知能が数学未解決問題を「自動推論」したとしたら、あるいは解決困難な社会問題を一刀両断に「自動解決」したら、人間の苦労なしに問題が解決される。

人々は、このような「自動化」を指して「人工知能の勝利」と称するわけだが、私は寧ろ人間にしかできないような創造的な仕事を増やすことで、技術的特異点の2045年問題を解決できると考える。

人工知能と共存する上で、これからの科学的発展は、彼らとの競争になるであろう。人工知能を悪と決めつけることなく、彼らができない仕事に人間が従事するとともに、適切な関係を維持する努力が必要である。

お探しのページは見つかりませんでした | Ameba Ownd

所属:愛知県立岡崎北高校
肩書:高校三年生