最近、理系の大学に進学した女性を「リケジョ」と呼ぶようになったようですが、わざわざそんな言葉が生まれたのは、女性が少ないから。
更に理系の中でも女性が集中している学科とほとんど居ない学科に極端に別れがちです。
理系でも女性が比較的多いのは生命、化学、建築などでしょうか。食品、化粧品、洋服の素材、デザインなど女性に好まれやすい仕事につながる学科には比較的女子学生が多くいるようです。
一方、女子学生が極端に少ないのは、私が所属する電気・電子・情報や機械。電気や機械は人数も多いですし、卒業後の産業界の裾野も広い。
電気というと「電機メーカー」と思われるかもしれませんが、自動車、IT、通信、電力・・・電気を必要とする産業は実に多いのです。
産業規模が大きく、就職が良いにもかかわらず、女子学生が極端に少ない。
こうした理系の卒業後の職場では、成果が数字で表しやすいため、比較的実力主義です。
技術者は顧客対応などの仕事に比べて個人で勤務時間を調整しやすい仕事でしょうから、育児をしながらも働きやすいでしょう。
採用数が多く、女性にとって働きやすい職場だとは思いますが、そもそも志望してもらえないというのは、もったいないことです。
電気だけでなく機械などでも似たような状況でしょう。
そこで、身近の知り合いや学生に、なぜ理系(特に電気)に進学する女性が少ないのか、聞いてみました。
・高校生の段階では将来の仕事が想像しにくい
・高校で学ぶ物理が抽象的で、何の仕事をするのかわからない
・電気に進学すると、電気工事や街の電気屋で仕事をすると思っていた
・男の仕事だというイメージがある
・電気など女性が行くところではないと親に言われた
・高校では理系女子が少なく、その中でも物理選択の女性はもっと少ない
・女性が少ないので行きづらい
・身近に電気を専攻している女性、仕事している女性がいない
・物理や電気は抽象的で黙って考えることが多い、おしゃべり好きな女子学生には敬遠される
まとめると、「勉強する内容や将来の仕事に興味が持てない」「ロールモデルがいない」「イメージが悪い」というところでしょうか。
いくら仕事として得だからと言って、損得勘定だけで仕事を選ぶわけではないでしょうから、仕方ないと思うところも多いです。
その一方、電気、エレクトロニクス、ITという分野は劇的に変わってきているという状況もあります。
IoT=Internet of Thingsと言われるように、社会のあらゆるモノ、医療、農業、電力インフラ、建物、交通・・・などにセンサが配置され、センサで収集したデータを解析して実際の社会にフィードバックする。
電気や情報は「手段」になり、私たちが生きるリアルな社会の理解や経験なしには、IoTのビジネスを行うことは難しい。
技術だけでなく、技術の使い方やデザインが大切になっているのです。
こうした社会の変化によって、女性が活躍する分野が広がっていくのではないかと思います。
企業にとっても、人口の約半数を占める女性の視点なしには、立ち行かなくなる。
最近は女性エンジニアが立ち上げた美容家電が話題になるようになりました。
また、ITを駆使したスマートホームの技術開発では、女性エンジニアたちが提案するアイデアが次々に実用化されつつあるとも聞いています。
実際にどのような家を作るかを考える上で、男性エンジニアだけの発想では限界があるのです。
こうして産業が変わり、電気を始めとする理系が変わりつつあるのは、女性にとってはチャンスではないでしょうか。
ただ、そういった事情を将来の進路を決める高校生が知ることは簡単ではありません。
産業も社会もこれだけ劇的に変わっている時代ですから、(女子学生に限らず)高校生は大学のオープンキャンパスや学園祭に行き、最新の動向を(無料で)知ることが、進路を決める上では参考になるのではないでしょうか。
夏休みには様々な大学でオープンキャンパスが開かれます。高校生にとっては、どこの大学に進学するかは大事でしょうが、それと同じくらい、どの分野に進学するかも大切です。
例えば私の所属する中央大学の理工学部では、8/6,7に後楽園キャンパスでオープンキャンパスを開催します。
オープンキャンパスでは、特に理系に興味のある女子学生を対象に、
「エレ女広報部with電電相談室(対象は電気電子情報通信工学科、場所は5号館1階5136教室)」
「理工系女子のチカラ(対象は理工学部全体、場所は5号館1階5134教室)」
というイベントを開催します。
先に女性に不人気な理由として、ロールモデルが居ないので進学しずらい、というのがありましたが、こうした企画(ブース)に行って、実際に女子学生やOGと話して実情を聞くのも良いかもしれません。
女性向けの理系の企画は中央大学だけに限りません。先週末に開催された、電気通信大学のオープンキャンパスでは、「電気通信大学で自分を磨く女子学生たち」というとても気合の入った資料を配布していて感心しました。先輩やOGがどう考えて進学し、大学で何を経験し、どのような仕事を選んだか、生の声を聞くことはとても大切だと思います。
女性が少しずつでも電気や機械といった分野に進むことで女性が活躍する場が広まり、同時にIoTの時代の日本の産業力が向上するWin-Winの関係になれば良いと思います。
実は中央大学の電気電子情報通信工学科では女子学生の入学者数が今年、激増しました。と言っても、やっと1割程度ですが。この傾向がこの先も続くと良いのですが。
編集部より:この投稿は、竹内健・中央大理工学部教授の研究室ブログ「竹内研究室の日記」2016年7月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「竹内研究室の日記」をご覧ください。