写真は講演中の山口拓朗氏
ビジネスパーソンと話すと、意外にも文章を書くことを苦手にしている人が多いことに気がつく。「うまい文章」とはどのような文章なのだろうか。
『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)の著者であり、フリーライターとして活動をしている、山口拓朗氏(以下、山口)に、うまい文章の書き方について聞いた。
●うまい文章ってどんな文章なの
――「うまい文章」と、「うまい書き方」は異なる。「論理的に書かれている」「結論が先に書かれていてメリハリが効いている」「表現力が豊かである」。だからうまい文章ということにはならない。山口は、うまい文章のことを「目標を達成できる文章」だとしている。
「例えば、案内ハガキを読んだ瞬間に、『なんてお得なセールなんだ。これは行かないと!』と思ったら、うまい文章です。広告を読んだお客さんが『なんだか冴えないなあ』と思ったり、『行く気がおきないなあ』と思ったら、うまい文章とはいえません。文章の目的を達成できていないからです。」(山口)
「少々言葉が稚拙でも、相手の目玉にハートマークを作らせることができれば、うまいラブレターです。美しい日本語やカッコイイ表現を追及することではなく、『タメになった』『面白かった』『感動した』と思ってくれれば目的は達成されたことになります。」(同)
――文章術に関連する著書を読むと、書き方やルールについて記述しているものは多いが、「それを読んだ人がどう感じるか」「伝えたいことが本当に伝わるか」という視点は抜けていることが多い。本来は、もっとも意識すべきポイントではないだろうか。
「自分自身に問いかけてみてください。『この文章の目的はなんなのか』と。その問いに答えを出すことが『うまい文章』を書くための第一歩になります。」(山口)
●文章作成は「書く」だけではない
―――昨年、ラグビーW杯の初戦で、日本が過去優勝2回をほこる南アフリカに勝利する大金星を挙げたことは記憶に新しい。ラグビーといえば、政治家はノーサイドという表現を好む。政治家をはじめ「ノーサイド(試合終了)=敵味方なし」、と考えている人が多いと思うが、それは少々間違っている。
本格的なラグビー場には、ロッカールームはあってもシャワールームは1つしか用意されていない。80分の試合後にシャワーを浴びて両チームが集まってアフター・マッチ・ファンクション(略:AMF)をおこなう。両チームの選手が参加して、乾杯し、歌をうたい、お互いを称えあってはじめて正式なノーサイドになる。
つまり、「試合(Game)+AMF(試合後の交流行事)=ノーサイド(No Side)」である。しかし、AMFは一般的にはそれほど知られてはいない。実は、この解釈の流れは「うまい文章」を書くプロセスに酷似している。山口は次のように述べている。
「ラグビーを知らない人に向けて、ラグビーの魅力を分かりやすく説明できますか。それには5つのプロセスが必要になります。
(1) ラグビーについて調べる
(2) 実際にラグビーの試合を観る
(3) ラグビーの魅力を実感する(理解する)
(4) ラグビーを知らない人の気持ちを察する
(5) その人たちが理解できるように「うまい文章」を書く
実は1~4は書く前のアクションです。『うまい文章』を書くには、事前の情報収集が重要であることが分かるかと思います。」(山口)
●「うまい文章」は見た目で決まる
――文章は伝えることが目的である。そのためには、「平易な表現」であることと、「わかりやすさ」は大切である。山口は、文章も「見た目が9割」だと主張する。
「見た目が悪いとスタートラインにすら立てません。しかし、見た目はテクニカル要素ではありません。『圧迫感がある』『疲れそう』『読みたくない』と思われないようにすることが大切です。読者は『読まない』という切り札を持っています。そして切り札を簡単に行使します。」(山口)
山口は、次のようにも述べている。「本書は私からのプレゼントです。お返しは、あなたの『とびきりうまい文章』でお願いします」と。やはり「うまい文章」である。
尾藤克之
コラムニスト
PS
7月26日開催の「第2回著者発掘セミナー」は好評のうちに終了しました。多数のご参加有難うございました。なお、次回以降の関連セミナーは8月末頃に公開する予定です。