「言った言わない」の水掛け論になったら

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ビジネスの場における、「言った言わない」の水掛け論は極めて不毛です。水掛け論の相手が上司や取引先であれば、なおさら水掛け論の争いから降りなくてはいけません。貴方が正しく証拠があったとしても争いを終了させたほうが賢明です。

マイナビがニュース会員500名(男性233名 女性267名)に対して実施した調査によれば、仕事相手とのトラブルの原因で多いのは「言った言わない」に起因する感情的しこりであるとの結果もあります。

●よくある仕事上の「言った言わない」

対外的なトラブルで多いものの一つに「踏み倒し」があります。ビジネスの初取引は別にして、それなりの実績がついてくれば、阿吽の呼吸で進めるのが常套です。契約書締結の前であっても契約書締結に時間がかかる可能性がある場合は、担当者レベルで先に進めることはあると思います。

ところが、内々では稟議がおりていて進めることに問題が無かったものが、突然の赤字で方針が転換される、また当該部門の担当者(責任者)の異動、会社の倒産、合併などによって回収できなくなることがあります。

未入金がある場合、回収は担当営業の役割になります。ところが、このような嫌な知らせは先方も百も承知。アポイントすらままならないことがあります。このような時のトラブルは、「言った言わない」になることが多いように思います。

「あの時、発注するって言ったじゃないですか」「そんなことは言った覚えが無い」「急いでいるから。契約書は後で、先に納品してくれと言ったじゃないですか」「それは君が勝手にやったことだ。どちらにしても発注した覚えは無いし言ったこともない」。こうなると収拾することが難しくなります。

●「言った言わない」になったら撤収

16世紀末のシェークスピアの『ヘンリー4世』では、「代弁者を撃つべからず」と書かれています。古代ギリシャ時代に書かれたソポクレスの『アンティゴネ』では、「悪い知らせをもたらす使者は生かさない」と書かれています。それだけ、悪い知らせを伝えることは大変難しく、いつの時代も悩みの種だったとも言えます。

「言った言わない」になった場合、問題を解決することは既に困難な状態です。強気に出れば「営業妨害」を主張される危険性が高まります。この場合は、対処を上司に依頼するか、手を引くことが何よりも賢明な方法といえます。

しかし、トラブルの発生はあなた自身の評価に関わってきます。そのため、火を噴く前に上司を上手く巻き込んでおく必要があります。このケースであれば事前に回収が難しいことをインプットしておけば、策を講じるなど計算ができるからです。いずれにしても、精神衛生上好ましくないトラブルは早期解決が鉄則です。

尾藤克之
コラムニスト

PS

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