部下は上司に従うべきか

尾藤 克之
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最近、世代間ギャップ(バブル世代と草食世代)による意識の乖離が話題になることがあります。これは、上司が部下に迎合しすぎて失敗しているケースが多いように感じます。

上司の世代とされているバブル時代にはスマホもインターネットもありません。しかし、日本が最もイキイキしていた時代として称されることもあります。果たしてどのような時代だったのでしょうか。いまの草食世代と比較しながら論じてみます。

●バブル時代の系譜を確認する

1985年のプラザ合意後、急激な円高が進んだため公定歩合を引き下げます。これがバブル経済の始まりといわれてます。

80年代後半、GDPは前年比5%前後で伸長し内需も拡大します。この内需は主要都市の地価を引き上げて地上げが横行していきます。投機が投機を呼ぶ土地バブルが発生しました。

バブル経済とは、プラザ合意後の、1986年12月~1991年2月迄をさすのが一般的です。絶頂期の1989年12月29日、日経平均株価は終値で3万8915円を記録し、誰もが1990年以降の拡大を疑いませんでした。

当時、私は学生でしたが、銀行に就職したOBに「賞与が立つ」という話をされたことがあります。これは「札束で賞与が支給されるので封筒が立つ」という意味です。

ある大手不動産会社の入社案内の表紙はギリシャのパルテノン宮殿でした。ページをめくると「100億円を動かす男」と称して新入社員が紹介されていたのを覚えています。

映画やドラマでもバブル時代を描いたシーンがあります。ある映画では、タクシーを停める際にサラリーマンが万札を振って停めるシーンがありますが、あれは脚色されています。

タクシーを拾う際に最も威力を発揮するのはタクシーチケットでした。特に個人タクシー(日の丸と提灯)のチケットはどのタクシー会社でも例外なく利用できたので大いに重宝されました。就活の選考でもタクシーチケットが配布されました。

ほかに間違ったものとしてはジュリアナ東京があります。バブル経済の場面になるとジュリアナ東京の映像とテクノハウスがかかることが多いですが、OPENは1991年5月ですからバブル崩壊後です。

なお「バブル崩壊」は、ある瞬間に発生した現象ではありません。「バブル崩壊=体感」ができたわけではありません。誰もが、バブル崩壊と気がつかず、数年間をかけて生じてきた社会現象です。

しかもバブル崩壊のその頃から、日本は高齢化社会に突入します。社会保障費は年々増加し歳入よりも歳出が多くなったことで国民負担は増加していきます。

非正規雇用労働者はバブル崩壊前は10%台でしたが現在では40%に迫る勢いです。サラリーマンの賃金も2002年を境に下がり始めます。日本は失われた20年に突入しバブル前の水準に戻ることはありませんでした。

●部下は上司に従うべきか

バブル世代に限らず、上司になる人は、分からない世代にレッテル貼りをするものです。私が社会人に成り立ての頃にはバブル世代という言葉が一般的ではなく、上の世代と同期されて「新人類」と称されていました。

大学サークル、ディスコパーティは全盛期でした。一年中、渋谷、六本木にあったディスコでのダンパ(ダンスパーティの略。いまは死語)が乱立していました。TDLを貸切って、学生が数万人集まることもありました。

しかも、広告代理店や有名企業がスポンサーに付きますから景品も多種多様です。目録のみの海外旅行、海外から自費で運ばなければいけない外車、一般道を走れない自転車、絶対に外れない知恵の輪など盛りだくさんでした。

そんな40代のイケイケ世代の管理職は、いまの冷静な反応の鈍い草食世代の若者に戸惑っているわけです。「覇気がない」「元気が無い」などと揶揄されますが、彼らはもっと自己主張をしなければいけないと思います。

我々世代も、上からは「ツカミどころがない」「常識知らず」などと言われました。この世代は、スマホもインターネットも無い時代。全てがリアルでした。

会社も簡単には休むことができません。熱があっても38度くらいであれば出社します。会社に出社してどうしても体調が悪い場合は、医師の診断を受けてようやく早退ができました。しかし、風邪を治す期間の猶予は与えられませんから、翌日は平常出勤です。翌日までに治っていなければ「あいつはやる気がない!」と評価を受けてしまいます。

残業で遅くまで残っているのも当たり前でした。仕事があるとか無いとか、効率性がどうとかの問題ではなく、上司より先に帰ることができないのです。上司が先に帰ればよし、これから一杯いくか?と言われたら付き合うのが当然でした。

このような風潮の多くには間違ったものが多いことも事実です。しかし、バブル世代は、いまの若者がLineやメールで「今日、欠席します」「遅刻します」と簡単な連絡で済ますことの軽さに嫌悪感をいだくのでしょう。

草食世代も、上司がどのような時代を生きてきたのか知らなくてはいけないと思います。その作業をしない限り、バブル世代と草食世代の意識の格差が無くなることはありません。

バブル世代の管理職も、いまの草食世代の性質を理解しなくてはいけません。しかし、組織論においてはピラミッド型のヒエラルキーが一般的であって、上司が部下に迎合する必要性は見当たりません。むしろ迎合するスタイルはマネジメントの本質を分かりにくくさせるため避けたほうが良いでしょう。

まずは双方の世代間の認識のズレを理解するところからはじめてみては。

尾藤克之
コラムニスト

PS

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