米6月貿易赤字、15年3月以来の高水準へ膨らむ

米6月貿易収支と米6月消費者信用残高をおさらいしていきます。

米6月貿易収支は445.10億ドルの赤字となり、市場予想の430億ドルを超えた。前月の409.56億ドル(411.44億ドルから修正)を8.7%上回り3ヵ月連続で増加しただけでなく、2015年3月以来の高水準を示す。ドル高が一服したものの、引き続き輸出の伸びを輸入が上回り赤字拡大につながった。

内訳をみると、輸出が前月比0.3%増(前月から増加に反転)の1831.51億ドルだった一方で、輸入が1.9%増(3ヵ月連続で増加)の2234.98億ドルとなった。国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの赤字は、646.92億ドル。前月の608.92億ドル(611.04億ドルから修正)を上回り、ヘッドラインと同じく2015年3月以来の水準へ膨らんだ。なお2015年の貿易赤字は前年比4.6%増の5315億ドルと、2012年以来で最大を記録した。2014年の5050億ドルに続き、2009年以来の水準まで改善した2013年の4715億ドルから増加した。

JPモルガンのダニエル・シルバー米エコノミストは、結果を受けて「米経済分析局が公表した米4~6月期GDP速報値より、純輸出の成長寄与度は低下する」と指摘。ただし、改定値の予想は「1.0%増」で据え置いた。

貿易収支、輸出も輸入も世界景気減速の影響か伸び悩み中。


(作成:My Big Apple NY)

輸出の内訳をみると、モノは前月比0.5%増と過去5ヵ月間で3回目の増加を示した。ドル高が一服したため、輸出に改善の兆しを見せる。項目別では食品/飲料をはじめ、消費財の増加が目立った。

(増加項目)
・食品/飲料 5.7%増、前月の5.6%増を含め3ヵ月連続で増加
・消費財 2.7%増、前月の1.7%減から反転
・資本財 0.8%増、4ヵ月ぶりに減少した前月の1.9%減から反転
・サービス 0.1%増、前月の0.1%増を含め2ヵ月連続で減増加

(減少項目)
・自動車 3.4%減、前月の2.6%減を含め2ヵ月連続で減少
・産業財 0.3%減、前月の0.2%増から転じ3ヵ月ぶりに減少

輸入の内訳をみると、モノが1.9%増となり前月の2.3%増を含め2ヵ月連続で増加した。過去5ヵ月間で4回目の増加を示す。原油価格が持ち直すなかでも、量ベースでの原油関連輸入は9.9%増と3ヵ月ぶりに増加した。石油製品を除いた場合は1.2%増と、前月の1.5%増を含め3ヵ月連続で増加。産業財を中心に資本財、消費財などが増加した。

(増加項目)
・産業財 6.3%増、前月の6.8%増を含め3ヵ月連続で増加
・消費財 3.9%増、前月の2.7%増を含め3ヵ月連続で増加
・資本財 2.1%増、前月の1.8%減から反転

(減少項目)
・自動車 1.9%減、前月の0.9%増から転じ3ヵ月ぶりに減少
・食品/飲料 3.1%減、前月の0.7%増から転じ3ヵ月ぶりに減少

国別でのモノの貿易収支動向をみると、中国への赤字は前月比2.6%増の297.56億ドルと3ヵ月連続で増加した。日本への赤字は26.0%増の58.78億ドルと、3ヵ月ぶりに増加。欧州への赤字額は逆に2.5%減の149.04億ドルと、減少に転じた。そのうち英国は7300万ドルの黒字となり、反転した。BREXITを経て、貿易動向の変化が注目される。

主な原油輸出国への貿易収支は、まちまち。原油先物の上昇を背景にカナダへの貿易収支は2.99億ドルの赤字と、前月の9600万ドルの赤字から急増した。石油輸出国機構(OPEC)への赤字も前月の6.9億ドルから、14.67億ドルへ拡大。一方で、メキシコのみ赤字額が7.8%減の53.50億ドルへ縮小した。以下は、今回の貿易収支における輸出と輸入の内訳のほか各国ごとのモノの貿易収支動向。

(作成:My Big Apple NY)

▽米6月消費者信用残高は予想以下、クレジットカード利用の伸び鈍化

米6月消費者信用残高は123.02億ドル増(前期比年率4.1%増)の3兆6339億ドルとなり、市場予想の160億ドルを上回った。前月の179.13億ドル(185.58億ドルから下方修正)に続き、増加基調をたどる。

クレジットカードなどを指す回転信用は77億ドル増(9.7%増)の9608億ドルと、前月の9531億ドル増から拡大した。自動車ローンや学生ローンを含む非回転信用は46億ドル増(2.1%増)の2兆6731億ドルと、増加トレンドを維持した。

――米6月貿易収支までの米経済指標を受けて、アトランタ地区連銀の米7~9月期GDP予想値を3.8%増とし、実現すれば前期比年率5.0%増を達成した2014年7~9月期以来の高成長となる公算。エコノミスト平均値である2.3%付近を大幅に上回ります。NY連銀の試算値では2.6%増とアトランタ連銀に届かなかったとはいえ、上半期から成長が改善する見通しで、年内利上げへの可能性を高めます。問題は時期。ハト派寄りのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)理事は米7月雇用統計前に行ったインタビューで「低成長の罠」に言及、利上げに急がないスタンスを打ち出しましたが、今後のFOMC参加者の発言でスタンスに変化の兆しが現れるのでしょうか。

(カバー写真:raymondclarkeimages/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年8月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。