先日、内閣府子ども子育て会議において、2016年度の小規模認可保育所数の統計が出されました。その数が昨年対比46%成長の2429園に激増したことは、以前僕のブログ等で報告しました。
小規模認可保育所が2429園に激増しました
http://www.komazaki.net/activity/2016/07/004815.html
無意味な規制の壁
しかし小規模認可保育所は、認可保育所と違って「2歳までしか預かれない」という規制をかけられていて、せっかくたくさん増やせるのに、可能性に蓋をされているような状況です。0~5歳まで3人ずつの18人の園とかできたら、とっても良いのですが、できないんですね。
そこで、小規模認可保育も普通の認可保育所のように、全年齢化してくださいな、と子ども子育て会議等で要望を出しました。すると、厚労省からは珍妙な答えが返ってきました。
エビデンスなき政策
「3歳以降の子ども達は、大集団の方が発達に良い」と。
「そんなエビデンスがどこにあるのですか?」と聞くと、「いや、エビデンスとか、そういうのはないんですけど・・・」とおっしゃる。さすがにそれで政策つくられたらたまらないので、「え、エビデンスがないのに仰っているんですか?」と聞くと「ちょっと調べます」と帰られました。
それで次に持ってこられたのが、この平成23年度文科省委託事業「幼児教育の改善・充実調査研究」( http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/youchien/1331564.htm )なのですが、これを見ても分かる通り、「先生が望むクラスサイズ」の調査でしかないわけです。「3歳以降の子どもたちにとって大集団がベター」かどうか、は調べられていないわけです。
保育政策あるあるなのですが、エビデンスが不十分にも関わらず、「過去そう決めたから」制度が運営され続ける、という状況になっています。
3歳以降も小集団がベター
僕は「小規模保育の全年齢化で、むしろ保育の質は上がる」と考えています。以下に根拠を示します。
1980年代に行われた有名なスター(Student Teacher Achievement Ratio)計画という実験が米国にてあります。
こちらで13人~17人の少人数学級と、22人~27人の通常学級のパフォーマンスの差を調べています。
(STARについては例えばこちらhttps://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pdf_seika/h26/0-1_all.pdf )
(画像は「学力の経済学」中室牧子より)
このグラフにあるように、幼児期から小学校3年生には少人数学級の方が有意にパフォーマンスは高く、特に貧困層には強く影響をもたらすことが分かりました。(ただし小4以降は効果は薄くなる)
また、コロラド大学のグラス教授とスミス教授の研究においても、学級規模と学力の負の相関関係が発見されており、これはグラス・スミス曲線として、各国においてクラス規模を考える土台の一つとなっています。
これを見ても分かる通り、小集団の方がこどもの学力に与える良い影響は大きいことが分かります。
面積基準は守りつつ
当然、従来の面積基準を守った上での全年齢化なので、子どもたちを狭いところに詰め込む、ということは当たりません。
一方で「3歳児以降は体を思い切り動かしたいから、立派な園庭がないと」という意見ももちろんありますが、お散歩は毎日近くの公園等に行っておこないますし、園庭がないことで失格なのであれば、都内の認可保育所の多くは失格となります。あればもちろん良いですが、なければ作れない、というのは明らかに過剰規制です。
まとめ
こうした過去の研究の蓄積から考えると、例えば0−5歳で3人ずつ、18人の規模の小規模保育を作ったとしても、保育の質は高くなりこそすれ、それによって低くなることは考えづらいのです。
むしろ小規模保育の全年齢化は、保育の質を上げ、さらに機動的に待機児童解消につなげていける、現実的かつ効果的な策と言えます。少なくとも、それを強固に阻害する規制の意味は、ありません。
エビデンスなき前例踏襲(「以前からそうなっていたから、多分正しい」)をやめ、制度を機動的にファインチューニングしていかなければ、待機児童問題は解決していけません。政治のリーダーシップに期待していきたいと思います。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2016年8月10日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。