なぜアパートの空室率は35%で、都心中古ワンルームは1%以下?

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金融の専門誌「日経ヴェリタス」の記事によれば、野村総合研究所は2033年に全国の空き家は2167万戸と2013年の820万戸から2.6倍に急増し、総住宅数に対する空き家率は13.5%から30.4%まで上昇するという予測をしているそうです(図も同誌記事から)。

また、別の調査によれば、東京23区や千葉県、神奈川県のアパート空室率は35%前後という結果も出ています。日本が人口減少している中、不動産投資を続けていて良いのか不安になるデータです。

しかし、株式投資でも銘柄によって投資結果が変わるのと同じように、不動産も立地によって、その価値判断は随分異なってきます。

全国で空き家が増えているのは、地方の跡取りがいない家に住む人がいなくなって放置されるケースが増えているからです。また首都圏のアパートの空室率の上昇は、相続税の課税強化によって不動産を保有している地主が、需要の無い場所に税金対策で無理やりアパート建設をしていることが原因の1つになっています。

日本全体の動きとは対照的に、東京の中心部の空室率は、オフィスも居住用も相変わらず低いままです。

オフィスに関しては、8月10日に東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の空室率は3.94%まで低下したと発表されました。東日本大震災の時には9.43%まで上昇したこともあるそうですが、8年ぶりの低水準になっています。また平均募集賃料も6年5ヶ月ぶりの高水準と報じられています。

居住用物件についても同様です。私が自分の保有物件について管理をお願いしている都心・中古ワンルームマンションの大手管理会社は、16,000戸以上の管理を請け負っていますが、空室率は0.72%と1%を切ってほぼ満室といえる状況です。これはリーマンショックの頃からあまり変わらず、入居率はむしろ上昇傾向にあります。

都心部の不動産の価格は上昇し、利回りは低下してきていますが、少なくとも東京の中央部に関しては賃貸需要は旺盛で、しっかりとインカム収入が稼げる状態が続いていると言えます。価格についても高値警戒感はありますが、金融情勢と銀行の融資姿勢が変わらなければ、大きなマイナスにはならないはずです。

私の見解とは対照的に、円高で外国人観光客が減ってホテルの稼働率が下がったとか、アパートの空室率が高まったという理由から不動産が危ういとしている「資産運用のプロ」もいるようです。どうやら不動産を自分で投資していないから、ミクロな実態が見えていない。リスクを取らずに一般論だけを語る残念な人のコメントです。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年8月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。