元気のない景気に対策はないのか?

岡本 裕明

為替は円高に振れ、国内株式は日銀によるETF買い入れを除けば元気がありません。背景には為替が再び100円を割り込む動きを見せるなど円高傾向が止まらないことで企業業績の先行きに不安感が台頭し始めたからであろうと思われます。

マーケットが閑散な時に為替が動くのは最近では定石で今回もお盆休みで市場参加者が少ない時期に大きく動きました。わずか12時間ほどで1円70銭近く動いた今回の円高劇も目新しい理由があるわけではありません。アメリカの金利が今年上がるかどうかその予想が右へ左へ揺れる度に円は1円近く振れることがしばしばです。実際、今日も円が一時99円50銭台を付けた後、ニューヨーク連銀が今年中の利上げに前向きと発言したとたんに1円ほど円安に振り戻されました。つまり、腰が座らない相場つきであるといえます。

但し、長期のチャートを見ると昨年8月をピークに明らかに円安トレンドは終了し、着実に円高に向かっています。大雑把ですが次の抵抗ラインは95円あたりでこれを抜けてしまうと下抜けで円高はかなり進んでしまう可能性があります。100円の攻防は一時的なもので間もなく100円を超える円高が当たり前になる日も間近に迫っているようにみえます。

さてこの円高傾向で輸出企業の業績がイマイチだというのは理解できます。が、私が注目しているのは不動産業界の不振であります。ついこの間までタワマン、億ションが売れて売れてという声だったと思ったのですが、市場の天気は変わりやすく7月の首都圏のマンション販売数に至っては前年同月比3割減と愕然とするほど落ち込んでしまいました。また、業界の好不調のバロメーターである月間契約率も7割のボーダーラインを下回る63%であり、新築マンションの売り出し平均価格も下げ基調にあります。

理由ですが一部解説に「買い手がマイナス金利の深堀を期待して買い控えている」とありましたがこれは見当違いでしょう。金利は目先にお得感がぶら下がっているものではありません。逆にマイナス金利の深堀を期待する買い控えというならばマンション価格が高騰しすぎたのでもっと安いのを待っているといった方が正解です。

それよりもタワマン億ション購入者が税務署の格好の標的となったわけで、業界が作ったセールストークが税務署を奮い立たせてしまったようなものです。もう一つは中国など諸外国からの買いの手が引っ込んでしまったことがあげられます。中国人の不動産保有の姿勢は所有期間、誰にも貸さず、じっと持ち続けて値上がりを待つスタイルをとるケースも多いものです。つまり、日本の不動産市場が長期的に成長市場だと思えば中国人を含む外国マネーは不動産市場に入り込みます。ところが昨年あたりの海外からの投資マネーは明らかに為替をみたマネーの流入であり、今売れば為替差益がたっぷりとれるため、逆に今後、売り圧力が強まるサイクルに入ってしまっています。逆立ちしても今から外国勢の個人マネーが日本の不動産を積極的に購入する理由は見当たりません。

一般企業はどうでしょうか?爆発的ヒットがあまりないように思えます。例えばオリンピック前はテレビの需要が増えるのがかつての定石でしたが今やテレビ自体に劇的進化があるわけではありません。6月の薄型テレビ販売台数は前年同月比マイナス21%で、前月と比較してもマイナスです。4Kテレビといっても4K放送ではない限り明白な違いはなく、ここから先、8Kに進化させてもごく一部の需要層を刺激するだけで市場全体を揺らすような商品にはならないでしょう。

期待される自動車業界はどうでしょうか?日産が高速道路で同一車線に於ける自動運転対応車を発売します。自動運転車は今後進化のステップを重ねるでしょうが、完全自動化はまだまだ時間がかかりそうです。この改善ステップは心理的にもっと良いものが近く発売されるという買い控え現象を起こしかねない可能性がないとは言い切れないでしょう。

何がこの苦境から脱出できる良策なのか、実に難しい課題ですが、個人的には個人消費を伸ばす対策を考えるよりも、企業業績を伸ばす施策が要になるとみています。企業が儲かれば設備投資や新規事業への投資もするし、給与も上がるし、各種税収も伸びます。

日本の問題は中小企業の大半が税金を払っていないというばかげた事態に陥っていることが大きな課題でしょう。私はここに何か経済の落とし穴があるような気がしてなりません。とんでもない発想ですが赤字企業にペナルティ的課税をして退場を促すという脅しでも効果がある気がします。マイナンバー制度の結果、何か改善が見られるのでしょうか?このあたりも興味深いところではあります。

夏休みが終わり秋に入ると英国EU離脱問題にアメリカ大統領選などで為替は円高に振れやすい要素が出てきます。秋は経済問題が噴出しやすい時期でもあります。シートベルトはしっかり締めた方がよさそうですね。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 8月17日付より

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。