苦境をはね返す日本選手の逆転力

さまざまな選手から感動をもらえているリオ・オリンピックですが、鳥肌が立つような劇的な逆転勝利が目立ちます。終盤を迎えての女子フリースタイルで登坂、伊調、土性3選手のいずれもが逆転勝利の金メダルでした。またそれに続くように、バトミントン女子ダブルス決勝では高橋・松友選手が、最終ゲームで16-19と追い込まれながら、連続6ポイントをとる鳥肌が立つような大逆転優勝です。この勢いに乗って男子400メートルリレーもメダルを期待したいところです。

女子だけでなく、もちろん男子も記憶に残る大逆転劇はありました。記憶に残っているだけでも体操個人総合で内村選手が最終種目鉄棒で奇跡的な大逆転金メダル、テニスの準々決勝で錦織選手が第3セットでタイブレークに突入し、モンフィス選手にマッチポイントを握られてから5ポイント連取の逆転勝利とか、 卓球男子団体決勝で水谷選手が2対2で迎えた第5ゲームで7−10からの大逆転も記憶に残るゲームでした。

水谷選手といえば、卓球男子シングルスで銅メダルを獲得した際のガッツポーズに、野球評論家の張本さんが「あんなガッツポーズはダメ。手は肩より上げちゃダメ」と理解不能な注文をつけていましたが、卓球を武士道の一種と間違っているのでしょうか。ネットにかつて張本さんがド派手に手を上げながらジャンプする写真が拡散され、大恥をかいておられましたが、張本さんも、世界の舞台で活躍する若い世代の気持ちやスタイルをもっと理解しないと年寄りのたわごとで終わってしまいます。

勝って獲る銅メダルが多かったこともあるのかもしれませんが、今回のリオ・オリンピックでは日本の選手たちが苦境にもめげず、試合に向かっていって勝ちをとるシーンが多かったことが印象に残ります。

苦境をはね返す日本選手の逆転力といえばいいのでしょか。なにか新鮮さを感じるのです。しかも、それはかつて強調された『根性』とは異なっています。

今回のリオでは『根性』という言葉はほとんど聞かなくなりました。かつての『根性』が強調された時代は、むしろ日本は、苦境に弱く、追いつめられると、そのプレッシャーに心が折れ、あっさりと負けてしまうことが多かったように思います。

冷静なゲームの組み立てや判断力、応援してくれた人たちに勝って応えたい気持ち、勝利への執着心が、神がかったような集中力を高め、逆転を呼び込んだのでしょう。そんな精神力はきっと積み重ねてきたハードな練習による技術、体力、気力から生まれてくるのに違いありません。

強い選手を生み出すのに、必要なのは育てる環境だということでしょう。『根性』で勝てるほどオリンピックは甘くありません。

韓国がその時代変化に乗り遅れてしまったようで、ロンドンでは日本を超える金メダルをとっていましたが、今回は惨敗です。

おそらく、韓国も生活が豊かになり、もはやハングリー精神や日本には負けたくないという目標では選手のモチベーションアップにつながらなくなり、さらに選手を育てる環境づくりに遅れをとってしまったことが原因だと思います。

なにか強いスポーツ選手に必要なものがなにかを教えてくれているようなリオ・オリンピックですが、東京オリンピックも選手が活躍できる環境づくりをぜひとも優先してほしいものです。オリンピックは、競技場などの箱モノは主役ではなく、あくまで選手が主役なのですから。

どうも、選手を育てる環境づくりよりは、無責任に東京オリンピックの予算は1兆円だ、2兆円だという箱モノ大好きな人たちがおられますが、そういった人たちは早々に引退願いたいものです。

それにしても、現在金メダル12のうち、女子が8つというのも、「女性の時代」を感じさせますね。政治の世界も世代交代と女性比率を革命的にあげれば日本も経済の停滞から抜け出し、グローバル競争のなかでも大逆転ができるようになるのかもしれません。