【映画評】青空エール

青空エール映画化スペシャル (SHUEISHA Girls Remix)

吹奏楽部に憧れていた小野つばさは、名門・白翔高校に入学する。しかしトランペット初心者のつばさは吹奏楽部のレベルの高い練習についていけなかった。内気な性格で、何度もくじけそうになるつばさを勇気づけたのは野球部の山田大介。二人は互いに励まし合い、甲子園を目標に頑張ろうと約束をかわす。1年生の夏、野球部が地区予選で敗れ、立ち尽くす大介を見たつばさは、思わず大介のためにスタンドでトランぺットを吹き、謹慎処分を受けてしまう。つばさは、いつしか大介への恋心を募らせていたのだが…。

河原和音による人気コミックを映画化した「青空エール」は、吹奏楽部所属の女子高生と野球部の男子高生が互いに励まし合い惹かれあいながら甲子園を目指す姿を描く青春映画だ。一緒に甲子園を目指す…という設定では「タッチ」がすぐに思い浮かぶが、野球とブラスバンドという距離感を持った連帯感は本作独特のものである。主役を務める土屋太鳳、竹内涼真の二人の演技は、正直、硬さが目立ってぎこちないのだが、その分、“一生懸命”が際立った。吹奏楽部と野球部、それぞれの物語を描くので、どうしても話が長くなってしまうのは難点。だが吹奏楽部の目指す場所は、コンクールよりもむしろスタンドでの応援で、誰かを勇気づけるということを主眼に置いているのがいい。

監督の三木孝浩は「僕等がいた」「アオハライド」など、青春恋愛映画を得意とするため、10代の高校生たちの不安や希望を、少しにじんだような明るい色彩と、抜けるような青空の対比で的確に演出。気恥ずかしいほどストレートな青春映画に仕上がっている。挫折しながらも夢を目指すそれぞれの青春と、互いを思いやる“両片思い”の恋が、まぶしいほどひたむきだ。

【60点】
(原題「青空エール」)
(日本/三木孝浩監督/土屋太鳳、竹内涼真、葉山奨之、他)
(ひたむき度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年8月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。