貯金が3000万円超えたシニアは、相続税を試算すべき

8月20日の日本経済新聞の報道によれば、2015年1月から実施された相続税の改正によって、首都圏の相続税の課税対象者は増税前に比べ1.7倍に増えているそうです。これは、基礎控除と呼ばれる課税対象から差し引ける金額が小さくなった影響です。

改正前は、5000万円 + 1000万円 × 法定相続人の数
だったのが、
改正後には、3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
と40%減らされてしまいました。

また税率も上の表のように変更されています(国税庁ホームページから作成)。

相続税額は遺産金額から基礎控除を差し引いて法定相続分を各相続人毎に計算し、それに上記の表で税率を掛けて控除額を差し引いて計算します。例えば、法定相続人が子ども2人で、遺産6億円の場合、

基礎控除は、3000万円 + 600万円 × 2 = 4200万円
なので
6億円 - 4200万円 = 5億5800万円
となり、これを2名で相続しますから、相続人一人当たり
5億5800万円 × 1/2 = 2億7900万円
となります。

これに上記の税率を当てはめると、相続税の総額は
(2億7900万円 × 45% - 2700万円) × 2人 = 1億9710万円
と計算できます。

相続税対策には様々な方法があり、上記以外の特例もあって複雑な計算になりますから専門知識を持った税理士に相談するのが一番です。その中で素人が 考えても、効果的だとすぐにわかるのは、資産を不動産で保有することです。遺産総額の計算する際に、金融資産は時価評価であるのに対し、不動産は路線価と 固定資産税評価額で計算されるという「歪み」が存在するからです。

上記例は現金で6億円の資産を保有している想定ですが、もし不動産で時価6億円の資産を保有していたら、相続税計算時の資産評価は圧倒的に小さくなります。どの不動産かによって評価は変わりますが、相続税評価は時価の3分の1程度まで圧縮できる場合も珍しく無いからです。

今週土曜日に開催される「第4回世界の資産運用フェア」では、税理士の無料相談コーナーに3名の税理士が登場予定です。また、シニア層に人気の都心の中古ワンルームマンションのブースもございます。相続について不安がある人にも、貴重な情報が得られる機会になると思います。

資産運用とはキャピタルゲインやインカムゲインだけが目的ではありません。タックスメリットという3つ目の投資の目的があることを忘れてはいけないのです。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年8月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。