マリオ安倍は2020年オリンピックの金メダルが取れるか?

岡本 裕明

安倍首相が遠路はるばるブラジルまで赴き、マリオに扮してアピールした2020年東京五輪は首相にとっても金メダルが欲しい4年間の道のりになりそうです。ブラジルへの道中、機内で新たにしたその決意とはバトンを繋ぐよりも独走態勢を望んでいるようにも見えます。首相はマリオのように強くしたたかに走り抜けることができるでしょうか?

安倍首相が今後4年間で独走の金メダルを取るにはハードルは多いものの全体的な風向きは悪くない気がしています。ざっと思い当たるハードルとして

国内経済再生とアベノミクスの成果
東アジア外交、特に対中国の関係。またアメリカ大統領選の行方次第では対米外交も課題
憲法改正問題、併せて天皇陛下の生前退位への対応
少子高齢化対策を含む国家のリバイタリゼーション

があろうかと思います。また、首相がオリンピックまで首相でいるには自民党党則改正が必要ですが、これは身内のルール。首相は明言していませんが、過去の戦略を見ているとどのようなオプションにも対応できるような形にしておき、最後、ベストの対応を取る策略は変わっていません。

例えば都知事になった小池百合子氏との関係は選挙までは「悪い」とされていたのに当選後の会談で「一本取られた」と冗談が出るほどの調子の合わせ方で丸川珠代五輪相は刺客ではなく、小池氏と二人三脚の意味合いがより強い感があります。

安倍首相を取り巻くメンバーは強みを増しており、菅義偉官房長官をうまく抑え、政策で大きな失敗がなければさほど困難ではないと思っています。

外交面で見ると安倍首相が世界の主要国で非常に重要な位置づけになりつつあります。G7のトップのメンツを見ても既に変わった英国、じきに変わるアメリカをはじめ、フランス、ドイツが2017年に選挙です。イタリアのレンツィ首相も秋の国民投票次第では辞任すると表明しています。カナダのトルドー氏はいかんせん若すぎるため、G7を牛耳るにはまだまだでしょう。となると安倍首相は世界の中でも安定した国家の安定した首相として地位が確固たるものになり発言力も増しやすくなります。

プーチン大統領も習近平国家主席も日本には「アベがいる」という意識を持っていますから外交面ではそれなりににらみは効いているはずです。

では国内に目を向けてみましょう。

最大の課題は経済でしょう。2013年にアベノミクスと日銀の異次元緩和というダブル効果で湧き上がった経済も賞味期限は2年程度でした。今や物価は再びレッドゾーンとなり、日銀政策には異論百出であります。黒田総裁の任期は18年4月。それまで全うするのか(あるいはさせるのか)このあたりも注目点になります。

個人的には小池百合子氏とうまく両輪を回すべきだろうと思います。安倍首相は日本のトップですが、小池氏率いる東京は経済の大車輪であり、4年後の主役です。考え方次第では日銀総裁より重要なポジションとなってくるでしょう。

安倍首相が一番苦労するのが憲法改正問題、そして突如持ち上がった天皇の生前退位のご意向であります。これをどのように取り扱うか、慎重な検討が進められていますが、憲法の改正が必要かもしれないという意見が出たことで今後、日本中が大きく盛り上がることになりそうです。

憲法改正の是非は国民一人ひとりが思うところが大きく、賛成派、反対派ともそのボイスは自己主張の声の張り上げ合いになりかねません。もちろん、反対派の理由はこれをきっかけに9条改正につながりかねないという危惧でありましょう。これが国内であまりにもつれると処置の仕方次第では首相の立場が脅かされかねません。ましてやご意向を示された天皇陛下との間に挟まる「あんこ」の状態になってしまいます。ここは非常に慎重に事の成り行きをまず第三者組織に委託しながら揉んでいくことになるのではないでしょうか?

短い任期の首相が続いた日本に於いて珍しく海外のメディアも「ABE」が日本政治の代名詞として理解されるようになりました。この海外向け営業努力は他の首相には誰も成し得なかったことであり、高い評価をしています。

あとは優秀な取り巻きをうまく活用しながら日本が真の金メダルを取れるよう「監督」として力量をみせるところではないかと思います。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 8月23日付より