米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は、カンザスシティ連銀が主催するジャクソンホール会合で講演を行いました。
”FRBの金融政策手段(The Federal Reserve’s Monetary Policy Toolki)”と題した講演で、同議長はここ数ヵ月の間に「利上げへの論拠が強まった」と発言。タカ派寄りへにじり寄ったのです。最大限の雇用、インフレ2%という統治目標に「接近しつつある」との見解も明らかにし、フィッシャーFRB副議長の講演内容と足並みをそろえました。もっとも、「米連邦公開市場委員会(FOMC)はゆるやかな利上げが適切と判断する」とも付け加え、非常にマイルドなトーンにとどめています。
ここでタカ派一辺倒に傾かないのが、イエレンFRB議長です。講演のタイトルそのままに、経済に負の圧力が掛かった場合の対応について言及することも忘れません。「ゼロ金利へ回帰した後はフォワード・ガイダンスと資産買入の合わせ技」が効果的とも述べ、状況次第では「広範囲にわたる買入」など強化する可能性も付け加えています。
NY時間午前11時40分までに金融市場はドル売り→ドル買い、ダウ100ドル高→上げ幅縮小、米2年債利回り上昇、VIX低下――というまちまちな反応を示しました。
9月利上げ派の間でも、意見が分かれました。バークレイズが「米国内需要、中国、BREXITといった6月に列挙した不透明性要因に言及しなかった」ため、9月利上げに整合的と分析します。対してBNPパリバは「明確な9月利上げシグナルを発したとは言えず、米8月雇用統計が当方の予想値21.5万人増に近い水準であれば利上げに青信号が灯る」と予想していました。
9月利上げ織り込み度は、昨日から上昇(ブルームバーグ値、FedWatchと異なる)。
(作成:My Big Apple NY)
イエレンFRB議長の講演後、どっちつかずのマーケットを動かした男こそたフィッシャーFRB副議長。CNBCに出演し、米8月雇用統計が利上げ決定へのカギを握るとの考えを示唆したのです。実は利上げ織り込み度、この発言まで9月分をはじめ低下していたものの上昇に反転。米株もダウなどそろって前日終値を割り込みました。
マーケットは9月利上げを歓迎していない様子。米8月雇用統計が力強い数字を叩き出せば、秋の嵐が相場を直撃しかねません。
(カバー写真:Federalreserve/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年8月26日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。