鹿児島県の三反園訓知事が、九州電力の瓜生社長を県庁に呼び出し、川内原発1、2号機の停止を求め、「県民の不安の声に応えて再点検してほしい」と要請書を手渡した。原子力規制委員会が1年以上かけて安全審査してOKを出した原発を停止して、何を「再点検」しろというのか。点検した結果がどうなら原発を動かすのか。何もわからない。
こういうのを「要請」とはいわない。5年前に菅直人首相が中部電力にやったのと同じ、知事の権限をバックにした脅しである。このときも彼は「お願い」だと言ったが、お願いを聞かなければ、行政に強く規制されている電力業界は何をされるかわからない。
このような曖昧な行政指導が批判を受け、行政手続法ができた。これは今回のような法的根拠のない不利益処分を禁じ、行政機関は所掌する事務の範囲内で、根拠法を明示した文書で指導しなければならない。事業者に異議がある場合は聴聞の手続きなどを定め、事業者が指導に従わなかった場合に差別的な扱いをすることを禁じている。
日本は法治国家である。首相も知事も、法を超えた権力を行使することはできない。それが三反園氏が、テレビ朝日の記者として安倍政権に求めた「立憲主義」である。戦前には法を超えた正義を振り回すファシストがクーデタなどで官僚を脅し、彼らがそれに引っ張られて日本はずるずると戦争に巻き込まれていったのだ。
九電は鹿児島県に対して行政手続法にもとづく根拠法の明示と聴聞の手続きを求め、法的根拠のない指導には従うべきではない。県が強制的に止めるなら、1日5億円の賠償が必要だ。九電の株主も経営者を監視し、原発を止めた場合は株主代表訴訟を起こすべきだ。