アフリカ援助で日本が果たす役割とそのハードル

岡本 裕明

安倍首相が出席するケニアでのアフリカ開発会議は日本とアフリカ諸国を結ぶ定期的会議であります。今回、ブラジルからの長旅の疲れも取れぬままケニアへの長旅へと精力的にスケジュールをこなす首相の姿はここにきてパワーアップしている感すらあります。

私から見るアフリカは地球で残された最後の可能性ある大地の一つであります。元来、アフリカはフランスなど欧州の影響が強く出ていましたが、今はアフリカ援助をする余力はなく、それに代わって中国が大規模な投資を伴う援助を行ってきました。その点、日本はアフリカ支援については中国に後れを取っているともされ、直近の経済支援規模も安倍首相が今回3年で3兆円を打ち出したのに対して中国は昨年今後3年で6兆円規模の支援をすると表明しています。

但し、中国の金銭的規模が果たして順調なのか、あるいはアフリカ諸国と円満でウィンウィンの関係を作りあげているのかはよくわかりません。かつてアフリカに投入された中国人労働者に不平不満が出たこともありますし、中国で有り余る鉄鋼や資材などのはけ口にしているとの批判もありました。中国らしいアプローチですし、想定できる批判でもあります。手の裏がほぼ読み通せる中国政策にアフリカ諸国の首脳は何を反省し、何を求めているのか、この辺りをうまく察したうえでの今回の安倍首相のアプローチは絶妙だと思います。

特に首相が2023年までにアフリカから国連の常任理事国を出すべきであると強く発言していることは注目に値します。日本のスタンスは様々な方面で遅れが見えるアフリカの成長をバランス感覚をもってサポートするという姿勢でしょう。

経済も経営も上を目指すにはその経済格差を埋めようとすることで成長効果が生まれます。例えば経済が孵化(インキュベーション)したばかりの国はまず、基本的生命を維持し、衣食住を提供し、国家はインフラを整備することからスタートします。これがある程度進むと内需が勃興し、国民による経済活動に加速度が増します。さらに産業が育成され輸出ができるようになると国民の中流化が推し進められ、中進国へと向かいます。これは日本の戦後も同様でしたし、中国も韓国も同様の流れを汲んでいます。

今、日本がアフリカに援助しようとしているのはアフリカが自立できるような援助です。インフラの整備もありますが、技術支援であり、民間の力を利用して現地に活力を生み出す仕組みであります。これはもろ手を挙げて賛成でいかにこれを促進するか、ここが今後の課題でしょう。

つまり、現地で活躍できる日本人をどう育成していくかこれにかかります。ご承知の通り、日本の若者は海外志向が薄く、国内のぬるま湯に浸りきってしまいました。アフリカ勤務となれば子供の教育ができない、単身赴任と決めつけてしまいます。私は子弟が日本の教育ではないといけない理由もないと思っています。自分の子供が世界の子供たちと接点を持ちながら広い創造力と経験を持つことはもっと重要でしょう。

多くの中国人子弟がアメリカやカナダを目指す理由は子供の教育であります。詰め込み教育から創造力と発想の豊かさを磨かせるために海外の学校にやるという積極姿勢に残念ながら日本はその後塵を拝しています。

安倍首相のアフリカ支援、はたまたインドやそれ以外の途上国支援への表明に対して民間がついてこれるのか、そしてその社員と家族をサポートする仕組みがあるのか、この辺りがキーになると思います。

例えば海外に出ると子弟の教育に遅れが出るというのが多くの駐在員の悩みであります。一定数居れば文科省から先生も派遣され、補習校が開校されます。しかし、こんな時代はもう、過ぎました。ネットによる個人学習システムは今や日本のどこでも行われている教育現場の主流であります。アフリカでもインドでもネットさえあれば日本の最先端の学校教育が受けられる仕組みがあるのですからこれを展開しない手はないでしょう。

日本がアフリカ支援に必要なのは案外日本人の人材確保という全く別の問題かもしれません。が、これは乗り越えられます。ぜひとも日本が純粋な意味での支援者となり、世界のリーダーシップをとれるようになれば素晴らしいことだと思います。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、みられる日本人 8月29日付より