前日に引き続いて地震の話について書きたい。マグニチュード6・2規模のイタリア中部地震が24日未明、発生し、290人以上の犠牲者を出した。隣国オーストリアでも連日、被害状況や救済活動についてテレビや新聞で大きく報道されている。犠牲となられた人々に心から哀悼の意を表したい。
たまたまローマの休暇中に地震を体験した知人のイタリア人女性が先日、ウィーンに戻ってきた。地震の話になると目を赤くして少々涙声になった。地震は隣国オーストリアでも感じたというが、ウィーンに住む当方はまったく感じなかった。プレートが違うからかもしれない。しかし、当方が飼っているモルモット(独メーアシュバインヒェン)は感じていたのだ。
というと、午前3時半ごろ、モルモットに朝の挨拶をした時、普段は陽気で明るいポッキー(モルモットの名前)が部屋から出てこないのだ。エサにも見向きもしない。全く動かないのだ。たまたま起きてきた妻が、「病気になったのかしら」という。どうやらかなり重症のようだ。ところが、4時ごろになると、ポッキーはいつものように部屋から飛び出し、餌を食べだしたのだ。少なくとも、病気ではなかった。
それでは、その身動きもしなかった半時間は何があったのか。後で分かったことだが、その直前、イタリアでマグニチュード6・2の地震が発生していたのだ。ポッキーは地殻が放出する巨大なエネルギーを体感し、怖くなって身動き出来なくなっていたのではないか。それ以外に 考えられないのだ。ポッキーはその後、何もなかったようにいつものように食べ、遊んでいるのだ。
地震の現場からは住人が飼っていた犬や猫の救済のニュースが流れていたが、わが家のモルモットは震源地からかなり離れていたが、地殻の揺れと放出された地震波を感じたのだろう。体験したことのない恐怖心で小動物は動けなくなったのだ。蛇に睨まれたカエルのようにだ。
ポッキーは住人以外の声や足音に対して敏感に反応し、新しい人間が近づくと怖くなって小さな部屋に駆け込む。動物たちの聴覚は考えられないぐらいシャープだ。
地震でほぼ全壊した村の写真が報道されていたが、その村の時計台だけは倒れなかった。不思議なことに、その時計台の針は地震が発生した時間を正確に示して止まっていたのだ。地震観測所の地震発生時と時計台の針は一分の違いもなかったという。
埋もれた人々の救済活動をしていた消防士は瓦礫の下敷きとなっていた女の子(9)を見つけた。既に亡くなっていたが、その遺体の下に彼女の妹(4)が見つかった。無事だったのだ。彼女は妹を守るように覆い被さっていたという。
消防士の一人が、「許してほしい。君を救い出すのが遅すぎたことを」と書いた手紙を9歳の女の子の棺の中に入れたという話が伝わると、人々の涙を誘ったという。
<参考>
池谷元伺大阪大学院教授(当時)はその著書「大地震の前兆、こんな現象が危ない」(青春出版社)の中で、動物や植物などに地震発生前、異変現象が見られる点に言及し、「地震発生の前に放出される電磁波パルスの影響」を指摘している。例えば、阪神淡路大震災の前、20%の犬、25%の猫が異常行為を示したという動物病院長の話を紹介している。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年9月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。