サブロー型?イチロー型?中小企業に必要な社員はどっちだ⁉︎

新田 哲史

サブロー引退会見

引退会見するサブロー選手(出典;ロッテ球団公式サイト


どうも新田です。シェアーズカフェオンラインみたいな時事ネタの乗っかり方も隠し球の一つです。ところで、マリーンズ番記者時代、取材当時に主力で活躍していた名戦士がまた一人、グラウンドを去ることになり、一抹の寂しさを覚えております。あぁ、ついに。。。

「やりとげた。後悔はない」ロッテのサブローが引退会見(産経ニュース)
http://www.sankei.com/sports/news/160901/spo1609010031-n1.html

サブロー選手、本当にお疲れ様でした。1995年からの20シーズンで通算1781試合、2割6分5厘、1362安打、127本塁打、655打点。私が2009年に現認したキャリアハイのシーズンでも3割1分4厘、22本塁打、68打点ですから、名球会(打者は2000安打以上)に入るような際立った記録を残したわけではありません。

記憶に残るクラッチヒッター

それでも、プロ野球選手の平均引退年齢が29歳という中で、目標としていた40歳までプレーできたのは、選手、ファンに慕われた存在だったからこそ。まあ、俗に言う「記録より記憶に残る」タイプのプレイヤーだったというところでしょうか。

パワーヒッターでも、アベレージヒッターでもないのに、歴代の監督が4番打者でよく起用したのは、その勝負強さ所以。脂の乗っていた2008〜10年シーズンでいえば、その3年間の通算打率2割8分7厘に対し、得点圏打率は3割2分6厘とチャンスに滅法強く、まさに「クラッチヒッター」の代名詞がふさわしい活躍でした。状況に応じた打撃も見事で、いつの試合か忘れましたが、最終回に先頭打者で出た時は卒のないコンパクトなスイングで単打を放ってサヨナラ勝ちの好機を作った記憶もあります。

組織の理不尽にも耐えた“サラリーマンの鏡”

サラリーマン社会に置き換えてみると、営業の部署でホームランに当たる大口クライアントの獲得を連発し、営業MVPを受賞するというタイプではなくて、毎月コンスタントに一定水準の数字を残し、通年の締めで営業成績をつける頃には、なんだか毎年のように上位10%くらいのところにいて、所属部署の数字の底上げを常に支えているような存在です。

そういえば、入団7年目には、それまで外野手しか経験がないのに、チーム事情で二塁手にコンバートさせられても黙々とこなし、あるいはその数年後、監督復帰したボビーに背番号2を強制的に譲らされたりとか、それこそ不本意な部署への異動や会社からの理不尽な命令にもきちんと大人の対応を見せるたようなもので、サラリーマンの鏡ですね。

しかもキャプテンシーとチーム愛は人一倍。巨人や阪神、ソフトバンクを大手企業とするならば、ロッテは中小企業といった立ち位置といったところ。フロントに戦力補強を要求して、時には外部から来た球団幹部との衝突も辞さないあたりは、まるで経営再建で銀行から出航してきた取締役と衝突する生え抜きの課長的な姿を彷彿とさせます。2011年には選手会長だったにもかかわらず、巨人に飛ばされちゃったわけですが、半年後にフロント首脳陣が変わるや、虎の子のFA権を行使してすぐに古巣に戻るあたり、彼こそ本当に“ミスター・ロッテ”だと泣かせてくれました。

なぜ“サブロー型”社員が中小企業の成長に必要か

自社へのロイヤリティーとプライドを持つ中堅社員って、成長途上の会社組織にとっては、本当に貴重な存在。私の知り合いの人事コンサルの話では、社長の目が届く範囲の社員数の規模は大体30、40人くらいだそうで、100人、ましてや大企業要件の一つである1000人以上となると、プレイングマネジャーがそれなりに活躍しないと組織回せないし、店舗を増やすにも、本店にいる社長の代わりに支店を仕切れる人が必要になります。しかも会社の逆境の時にもモチベーションを維持し、持ち前の勝負強さで重要な営業案件を獲得し、若手を引っ張り、時には経営陣が間違った時の苦言も辞さない“サブロー型”の社員は、中小企業の飛躍には不可欠じゃないでしょうか。

サブロー選手がプロ入り時の登録名であやかったイチロー選手は、サラリーマン社会でいえば、年功序列の会社であっても、ごぼう抜きで若くして役員になってしまうような際立った存在。しかし、そんな“イチロー型”ともいえる天才的社員は、中小企業で頭角を表せば大企業なり、外資なりにヘッドハントされて、まあ会社に残らない(苦笑)やっぱり、“サブロー型”の人材は、中小企業にはありがたいですよ。

さて、気になるサブロー選手の今後。まだ引退が決まったばかりでコーチとして残るのか、解説者などとしてグラウンドの外に回るのか未定のようですが、“サブロー型”社員が今度は中小企業のサラリーマンが指針とするような生え抜き役員として活躍する姿は見てみたいところ。

サブロー選手は以前から、球団のお膝元、幕張で中学硬式野球チームのオーナーを、福浦選手と一緒にやっておりまして、スポニチの取材に以前、「千葉からロッテのスーパースター選手を出したい」と語っていたとのこと。その夢が叶えられるよう、次なるご活躍に期待しております。ではでは。

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