うららさんが諦めるのはまだ早い --- 山田 高明

先月のNHKニュースで「貧困を訴える女子高生」として登場して以降、仮名・うららさんが大きな騒動に巻き込まれています。すっかり政治的な論争に摩り替わってしまいましたが、私はそれには加わらず、あくまでうららさんの個人的窮状に対して、(メッセージが届くか否かはともかく)一つの打開策を提示したいと思います。

うらら

うららさんのイラストを拝見しました。あなたが絵を描くことが大好きで、「ワンピース」の大ファンであるということが、とてもよく伝わってきます。私は「ワンピース」のことはあまり詳しくありませんが、同じジャンプ作品の「NARUTO」と「ドラゴンボール」の大ファンなので、気持ちはよく分かります。

一般的にいって上手な絵だと思いますが、しかしながら、私は人様の才能について太鼓判を押したり、保証したりする立場にはありません。ただ、そんな私でも、あなたの中に一つだけ大きな資質を見出すことができます。それは今言ったように「絵を描くことが好き」ということです。イラストからはそんなあなたの喜びが伝わってきます。昔から「好きこそものの上手なれ」と言われますが、あなたはすでに少なくとも一つの才能を獲得しているわけです。ただし、これはまだスタート地点にすぎません。

うらら2

うらら3

(2016/08/18 NHKニュース7より)

もしあなたが学費の問題でアート系学校への進学を諦めざるをえない状態だとしたら、一つの解決法があります。それは新聞奨学生という道です。これならば入学金や授業料を払えなくとも、新聞配達の仕事をすることで学校に通うことができます。そして、配属先の販売店には、あなたと同じ境遇の仲間たちもいます。

むろん、現実的な解決策ゆえに厳しいです。当然、それは日々の労働と引き換えです。ゆえに事実上の借金と言えるかもしれません。はっきり言って、慣れるまで辛いと思います。学期中は仕事と通学の両立の難しさを思い知るでしょう。親から学費を出してもらって遊んでいる同級生たちを見て、不公平だと思うこともあるでしょう。

ただ、なんとか最初の三ヶ月を乗り越えて無事に夏休みに入ることができれば、その後もやっていけるという自信を持てると思います。

もっとも、学校はあくまで手段にすぎないことも承知してください。学校は学ぶ機会を用意してくれるだけで、それ以外に何かしてくれるわけではありません。せっかく進学しても、何もしない人は何も身につかないのです。つまり、結局はあなたの努力次第です。

逆にいえば、あなたにやる気さえあるなら、そこは大きな飛躍の場になります。たとえば、学校の設備をフルに利用させてもらって、必ずデジタルイラストの技術をマスターし、向上させましょう。ワコムのペンタブレットは高価ですが、これからプロのイラストレーターをやるなら必須アイテムですので、図々しいくらいに利用させてもらいましょう。学科によりますが、CG制作の技術を身に付けると、二次元だけでなく三次元にも創作の幅が広がり、アーチストとしての可能性も高まって、就職にも有利になります。

もし、あなたが心の底から、もっとスキルを磨きたい、思う存分イラストを描きたい、そのために進学したい、というのなら、上のような方法もあるわけです。本当にやりたいと思うなら、簡単に諦めてはいけません。少なくとも、あなたの年齢からすると、やらないうちから諦める歳ではありません。ルフィじゃなくてナルトの例で申し訳ありませんが、彼の口癖は「火影になる夢は絶対に諦めないってばよ」ですね。

最後に、もし現在、あなたが何らかの政治活動に関わっているとしたら、いったん離れましょう。今回、あなたはとんでもない騒動に巻き込まれてしまいましたが、この試練を逆用して、しばらくは絵を描くことに専念してはどうでしょうか。そして、一刻も早くプロのレベルに到達しましょう。将来、あなたが本物の、プロのイラストレーターになり、素晴らしい作品を発表すれば、誰もあなたをからかわなくなります。たった一枚の、生き生きしたキャラクターの登場する、感動的な絵が、あなたに対する世間の評価をひっくり返すでしょう。またそれがあなたをバッシングする人々を見返す方法でもあります。

(フリーランスライター・山田高明 ブログ「フリー座」