映画「後妻業の女」から考える「お金が無い不幸、お金がある不幸」

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映画「後妻業の女」を観ました。熟年の男女が集まる結婚相談所で資産家の男性を狙って資産を巻き上げる女詐欺師のことをこう呼ぶらしいです。主役の 大竹しのぶさんをはじめ、芸達者な出演者のリアリティとユーモア、そして時間を忘れるくらいにテンポ良く展開してストーリーに惹きこまれました。シニアが主役の人間喜劇です。

熟年の結婚相談所にやってくる男性のモテる条件はズバリ「資産だけ」だそうです。経済力以外の男性の魅力は、年齢と共にほとんどなくなってしまう。何だか悲しい話です。

しかし、お金がある人にも、お金が無い人にもそれぞれに悩みがあります。

お金が無ければ経済的な自由を手にすることができず、シニアになってからの生活に制約が出てしまいます。好きな趣味を続けることもできず、子どもや 孫にあげるお小遣いにも不自由するのは何ともやり切れない気持ちになるのではないでしょうか。「お金が無い不幸」は若いうちから入念な準備をしておくこと で回避することができます。

一方で、資産家には後妻業の女のような、お金を目当てに近寄ってくる人たちがたくさんいます。何を目的に自分に近づいてくるのか、疑心暗鬼になって しまい、誰も信用できなくなってしまうこともあるようです。そして将来実際に相続が発生すれば、親族同士であってもその配分でもめることが珍しくないと言 います。中途半端にお金を残してしまうことによって、逆にトラブルの元になってしまうケースもあるのです。「お金がある不幸」です。

個人的には、老後のお金は自分がやりたいことを出来る程度の経済力を目標に、計画的に確保し、自分の人生が終わるまでに綺麗に使い切るというのが理 想だと思っています。消費してピッタリ使い切るのは無理ですが、人生の終わりに相続財産をゼロにする仕組みを作っておくことは可能です。

後妻業というのは、遺産を巻き上げるのが仕事ですが、資産家本人が同意して相続財産を渡す公正証書を作成していれば、犯罪にはなりません。残された 家族にとっては、泥棒ネコのような存在でしょうが、亡くなってしまった資産家本人は人生の最後にいい夢見させてもらったと、後妻業の女に感謝しているかも しれません。

お金があっても、家族との絆が得られなかった孤独なシングルシニアの哀しさと、お金に翻弄されるその周りにいる人たちの滑稽さ。笑いの中に深遠なテーマを問いかける、素晴らしい作品でした。今年は日本映画の当たり年のようです。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年9月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。