東京の不動産価格は「3つのマーケット」で考える

image486

東京の不動産価格が調整局面に入ったという見方が強まっています。不動産専門会社の調査によると東京都内の中古マンションの希望売出価格が2年ぶりに0.1%下がったそうです。そう言われてみると、新聞の折り込みチラシの価格も横ばい。物件によっては、「新価格」という実質の値下げをしているものも出てきました。

東京の中古マンションのマーケットについては、すべてをまとめて考えるのではなく、3つの市場を区別してそれぞれの動きをチェックしないと本質的な動きが見えないと思います。

3つの市場とは「富裕層マイホーム市場」「サラリーマンマイホーム市場」そして「投資物件市場」です。

「富裕層マイホーム市場」は、写真のチラシのような物件をキャッシュでポンと買えるような金融資産を数億円以上保有しているような人たちのマーケットです。現金購入なので、金利は購入意欲に直接関係ありません。都心の超高級物件の需要はこの富裕層が支えていますが、金額は大きいものの、マーケットは2つ目のサラリーマンマイホームに比べると圧倒的に小さくなります。購入決定要因は「物件の魅力」です。

一番大きな市場は「サラリーマンマイホーム市場」です。住宅ローンを組んで、仕事の収入で返済していく人たちです。住宅ローンの金利が下がれば返済余力が高まりますから、金融緩和はプラスの影響です。しかし、賃金が上がらなければ購入できる金額の上限に限界があります。購入決定要因は「仕事からの収入」「住宅ローン金利」です。

3つ目が「投資物件市場」です。こちらは、物件の利回りと借入金利の関係によって決まってきます。都心中古ワンルームを例に取れば、金利差が3%以下になってくると借入を利用して購入してキャッシュフローをプラスにすることが難しくなります。現在の賃貸利回りは管理費や修繕積立金を差し引いたネット利回りで4%台半ば。借入金利が1%台半ばですから、金利がさらに下がらなければ、価格は頭打ちになります。購入決定要因は「賃貸利回り」「不動産担保ローン金利」です。

マーケットの規模が大きいサラリーマンマイホーム市場と投資物件市場に関しては、不動産価格に最も大きな影響を与えるのは、今後の金利です。つまり、日銀の金融政策が不動産価格を決めると言っても良いでしょう。今後、金利が反転上昇するような事態になれば、価格は調整する可能性があります。

都心の中古ワンルームの販売状況を見ていると、価格はあまり変わらないものの、購入希望者は以前よりさらに増えている印象を受けます。これは、他の投資対象の利回りが低下して、相対的に不動産投資の優位性に気が付く投資家が徐々に増えてきているからだと推測します。

日銀のマイナス金利導入から半年が経過。コツコツ投資だけではお金の不安が解消できないと考え始めた人たちのアクションが始まったようです。具体的な方法を知りたい方は今週発売になった新刊「60歳から毎月20万円入る術」を読んでみてください。

※毎週金曜日に配信している「資産デザイン研究所メール」。資産を守り増やすためのヒントから、具体的な投資のアイディア、そしてグルメな情報まで、メールアドレスを登録するだけで無料でお届けします。

※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年9月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

アバター画像
資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。