アメリカ大統領選、これでいいのだろうか?

岡本 裕明

11月のアメリカ大統領選挙まで残すところ2か月を切ったのですが、この選挙戦も長すぎること、両者がしゃべりきったのか、何も前向きの話は出てこない中で、上げ足の取り合いに正直興味を失ってきた方も多いのではないでしょうか?

各党の候補者選びの段階では候補者がそれなりに政策を述べ、夢を語ってきたのですが、討論会を前にその盛り上がりも欠き、今や「消去法的選択」とも言えそうです。

数日前、証券マネージャーと銀行マネージャーと朝食ミーティングの際に雑談で出てきたのが「南の選挙、どう思う?」。お互い、表現はsheとheという人称代名詞。私が「結局はsheが勝つのかね」とつぶやいたところ、証券マン氏はsheは最悪だと一気に喋りまくり女性の銀行マネージャー氏はだんまり。そこで私が「健康問題はやっぱりsheには大きなマイナス」と述べたらようやく銀行マネージャー氏も同意したもののheにしたいという言葉は両者から一度も出てきませんでした。

バンクーバーで今、「トランプタワー」というホテルが最後の仕上げに入り、急ピッチで工事が進んでいます。バンクーバー目抜き通りに存在する50数階建てのピカピカのタワーにはある問題があります。それは玄関に掲げられたTRUMPという巨大な文字のサインが3-4か月前に据え付けられたものの、その文字表示を黒っぽいビニールで全部覆ってしまっているのです。
trump twr
なぜか、といえば当地の市長がトランプ氏のかつての様々な差別発言に激怒しトランプタワーという名称を使わせないと公言し、問題になっているからです。では、この名称、どうなるのだろうか、というのはバンクーバーの週刊誌的ネタとしては面白おかしく語られているのですが、トランプ氏が大統領になったら名称変更、ヒラリーが大統領になったら名称は黙認されるのでしょうか?

ではヒラリー。肺炎と診断されて911追悼式典を途中退席、その後の選挙演説もキャンセルしたのですが、肺炎にしろほかの潜在的健康問題にしろ、激務の大統領が務まるのか、というのはシリアスな問題であります。その中で最大の懸念は何の根拠もない噂と一蹴されている「記憶が時々消える」という状態で先日の私用メール問題の調査報告書でも同様の指摘があったはずです。

これを受けたトランプ氏は当然、烈火のごとく責め立てるかと思いきや「良くなってほしい」とエールを送っています。この180度転換の態度が何を意味するのか、様々な憶測がありますが、トランプ氏は何かをつかんだのではないかという気がしてなりません。

とにもかくにもこの大統領選は不人気投票のブービーとブービーメーカーを争うようなレベルとなり下がっているように思えますが、オバマ大統領の不人気ぶり、外交下手、更にはブッシュ(子)のイラクへの不当介入など正直、アメリカ政治は先進国の中の二流に甘んじているとしか言いようがありません。

アメリカはもともと自己利益追求型の社会であります。「努力しないものは食うべからず」の思想のもと、その分、飴の部分はとてもおいしいものを貰えるような体制でもあります。アメリカでナショナリズムが台頭してきたといいますが、実際にはもともとがナショナリズムの強い国家であり、かつての世界の警官も地球を制覇するというナショナリズムの思想であったとも考えられます。それゆえの米ソ冷戦であり、朝鮮戦争、ベトナム戦争でありました。

そんなアメリカも政治的には熟れすぎて今回のheとsheの年齢は現在70と68歳。就任時にはsheは一つ齢が増えています。大統領も成熟すると昔の良きアメリカを回顧し、あの時代に後退させやしないかと心配であります。

明らかに言えることは日本はアメリカにもはやそれほど依存できなくなったということであります。それゆえの現政権の長期安定は必須であります。日本がロシアと平和条約締結、北方領土問題解決をしたとすればこれは日米関係の根本的力関係を揺るがす可能性すらある気がしています。

どちらが大統領になっても見えるピクチャーはある点においては似たようなものかもしれません。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 9月16日付より