久保田早紀のヒット曲『異邦人』のルーツを中央線沿線に発見した

尾藤 克之

ジャケットは吉祥寺で撮影された。画像はAmazonより引用

読者の皆さまは、久保田早紀という、シンガーソングライターをご存知でしょうか。大ヒット曲、『異邦人』が有名です。現在は、久米小百合として、ミュージックミショナリー(キリスト教音楽家)として活動をしています。

久米小百合(以下、久米さん)は、東京都国立市で生まれました。4歳の頃からピアノを始め、松任谷由実に憧れていた少女でした。共立中・高校を経て、共立女子短期大学に入学します。そして、在学中に開催された1978年「ミス・セブンティーンコンテスト」をシンガーソングライターのコンテストと間違い、自らの曲を録音したカセットテープを送ります。

ところが、これが担当ディレクターの目にとまり、デビューのきっかけにつながります。『異邦人』(CBSソニー)の大ヒットは誰もが知るところです。シルクロードを馬車が走り、バックで『異邦人』が流れるエキゾチックなCMは大変な評判になりました。

その、久米さんが、水越浩幸(以下、水越さん)が運営する動画チャンネル「メディカツ(メディアコミュニケーション活用塾)9月15日放送」に出演しました。本邦初公開の情報を含む、大変興味深い内容だったのでルポルタージュ形式でまとめます。

■中央線の西側にそのルーツが存在する

—「この度は、突然の依頼にも関わらず有難うございます。カタイ番組ではないのでリラックスしながら進められればと思います。では、さっそくお聞きしたいのですが、『異邦人』のレコードジャケットはどちらでロケをされて撮影したのですか?」(水越さん)

「ジャケット写真は、吉祥寺のサムタイムというライブハウスで撮影しました。ステージの横か後ろだったと思います。撮影のためにロケをしたわけではありません。」(久米さん)

—「驚きました!吉祥寺のサムタイムですか。昔はよく行きました。そういえば久米さんが音楽に親しむきっかけは何だったのですか?」(水越さん)

「母親が、男の子が生まれたらバイオリン、女の子が生まれたらクラッシックピアノと決めていたようです。当時はグループサウンズが好きだったのですが、女子高ですからバンド活動をするような雰囲気ではありませんでした。」(久米さん)

「また、『異邦人』は元々は中央線に乗りながら誕生した曲です。小金井より西〜国立近くに差しかかると、当時は空き地がたくさんありました。電車から子供が鬼ごっこをしている風景が目にとまって『子供たちが 空に向かい 両手をひろげ 鳥や雲や夢までも つかもうとしている』という歌詞が出来上がりました。」(同)

—「驚きました!中央線に乗りながらですか?」(水越さん)

「普段はメロディからつくるのですが歌詞が先に浮かびました。あまりに単調な曲だったので、ピアノではなく、ギターを弾きながら曲の原型をつくりました。」(久米さん)

■自分の音楽のルーツを探してたどり着いた場所

—「いまは、教会でミュージックミショナリーの仕事をされていますが、どのような経緯で行き着いたのでしょうか?」(水越さん)

「当時は、音楽番組が終わると何社もインタビューがありました。音楽誌、アイドル誌など様々です。そして必ず次のように聞かれます。『久保田さんの音楽のルーツを聞かせてください』『音楽のバックボーンはなんですか?』と。それまでが普通の女子大生ですから、上手く答えられないのです。」(久米さん)

「そして、私の音楽のルーツを探して、たどり着いたのがピアノと賛美歌でした。それが洗礼を受けたきっかけになりました。海外であれば、自分のフィロソフィーや音楽性を隠す必要は無かったでしょう。当時の日本では、音楽に信仰や哲学は好ましくないとされていました。本当に遣りたいことをやるには引退するしかありませんでした。」(同)

—「遣りたいことをやるためには引退しかなかったと?」(水越さん)

「はい。あとは、テレビは出るものではなく見るものと思っていました。また、テレビに出ることによって誤解を与えたくないので、出演しなくなりました。」(久米さん)

■「いまの夢」はローマに日本人の教会を建てること

—「いまの夢や、2020年の東京オリンピックに向けて考えていることがあれば教えてください。」(水越さん)

「イタリアには日本人の教会が1つしかありません。ミラノにはありますがローマにはありません。私が生きている間に実現できるかは分かりませんが、ローマにできたらいいなと思っています。また、オリンピックには、色んな国の人が来ると思います。日曜日は教会に行く人のために地図を用意するなどお手伝いしたいと思います。」(久米さん)

—「本日は、有難うございました。」(水越さん)

『異邦人』のルーツはなんと中央線沿線にありました。当初はシルクロードを意識した曲ではなかったことにも驚きでした。現在は、ミュージックミショナリーとして精力的に活動を続ける久米さん、今後の活躍も楽しみです。なお、今回、取材等に協力いただいた水越さんにも御礼申し上げます。

異邦人 [EPレコード 7inch]』(久保田早紀・CBSソニー)

尾藤克之
コラムニスト