米8月CPIは強い伸び、PPIと輸入物価下振れとまちまち

米8月消費者物価指数、同生産者物価指数、同輸入物価指数をおさらいしていきます。

米8月消費者物価指数(CPI)は前月比0.2%上昇し、市場予想の0.1%を上回った。前月の±0%を超えつつ、2013年2月以来の強い伸びを達成した4月の0.4%で腰折れムードが漂う。原油先物が7月から回復するなか、エネルギーが±0%と前月(1.6%の低下)から反転。ガソリン価格は前月の4.7%の低下から、今回は0.9%の上昇に転じている。エネルギー情報局(EIA)によると、ガソリン平均価格は2月に一時1.724ドルへ下落し2009年3月以来の2ドル割れを示した後、6月に一時2.399ドルまで上昇。7月には2.149ドルまで下落を経て、8月には2.237ドルまで持ち直した。食品・飲料は前月に続き、±0%だった。

CPIコアは前月比0.3%上昇し、市場予想の0.2%を超えた。前月の0.1%を上回り、2011年8月以来の高水準に並んだ2月に等しい。項目別動向は、以下の通り。

・帰属家賃 0.3%の上昇=前月は0.3%の上昇、6ヵ月平均は0.3%の上昇
・家賃 0.3%の上昇=前月は0.3%の上昇、3ヵ月平均は0.3%の上昇

・サービス 0.3%の上昇>前月は0.2%の上昇、6ヵ月平均は0.3%の上昇
・医療費 1.0%の上昇、1984年ぶりの高水準>前月は0.5%の上昇、6ヵ月平均は0.4%の上昇。
・服飾 0.2%の上昇>前月は±0%、6ヵ月平均は0.1%の低下

・教育 ±0%>前月は0.2%の低下、6ヵ月平均は±0%
・娯楽 0.1%の低下=前月は0.1%の低下、3ヵ月平均は±0%

・中古車 0.6%の低下>前月は1.0%の低下、3ヵ月平均は0.9%の低下
・新車 ±0%<前月は0.2%の低下、3ヵ月平均は±0%
・航空運賃 0.1%の低下>前月は4.9%の低下、3ヵ月平均は1.1%の低下

CPIの前年比では1.1%上昇し市場予想の1.0%を超えた。年初来で最低にとどまった前月の0.8%から回復しつつ、2014年10月以来で最高を示した1月の1.4%には届いていない。CPIコアの前年比は2.3%上昇し、2月、6月に続き2012年5月以来の高水準だった。

コアCPI、Fedが注目するコアPCEとともに前年比で伸び悩み。


(作成:My Big Apple NY)

▽米8月PPI、上流部分でのインフレ低迷を示す

米8月生産者物価指数(PPI)は前月比±0%となり、市場予想の0.1%の上昇に届かなかった。4ヵ月ぶりにマイナスに落ち込んだ前月の0.4%の低下からは、持ち直しを示す。コアPPIは前月比0.1%上昇、市場予想通りだった。前月の0.3%の低下から回復した。

PPIは前年同月比で±0%と、市場予想の0.1%の上昇に届かなかった。前月の0.2%の低下からは、下げ幅を打ち消している。コアPPIは市場予想通り1.0%上昇し、前月の0.7%から改善したが6月の水準には届いていない。

PPI、コアと合わせ原油先物につれて失速。


(作成:My Big Apple NY)

内訳をみると、全体の6割を超えるサービスが0.1%上昇し前月の0.3%の低下から転じた。サービスのうち3割を占める貿易が0.6%低下し前月の1.3%の低下に続き弱い。1割弱を占める輸送・倉庫も0.4%の低下し、前月の0.1%の上昇から転じた。サービスのうち6割を占めるその他サービスも0.5%上昇し、前月の0.2%に続き3ヵ月連続で上向いた。

モノは前月に続き、0.4%低下した。エネルギーが0.8%低下し、2ヵ月連続でマイナスに陥っている。食品も1.6%低下し、前月に続き弱い結果を迎えた。

▽米8月輸入物価、石油をはじめ全て弱い

米8月輸入物価指数は前月比0.2%低下し、市場予想の0.1%の低下より下げ幅を広げた。前月の0.1%の上昇から転じ、6ヵ月ぶりにマイナスへ落ち込んだ。原油先物が40ドル台で安定推移するなか、石油が2.8%低下(前月は3.6%の低下)し全体を押し下げただけでなく、食品・飲料をはじめ軒並み弱い。結果、燃料を除く輸入物価指数は±0%と前月の0.5%の上昇から横ばいに甘んじた。以下は、項目別動向で資本財以外が全て低下している。

・資本財 ±0%>前月は0.1%の低下
・消費財 0.1%の低下、3ヵ月連続でマイナス=前月は0.1%の低下
・自動車 自動車 0.2%の低下、2ヵ月連続で低下=前月は0.2%の低下
・食品 0.5%の低下<前月は3.1%の上昇
・産業財 0.6%の低下、2ヵ月連続で低下<前月は0.1%の低下

輸入物価は前年比で2.2%低下し、市場予想と一致した。前月の3.7%の低下より、下げ幅を縮小している。ただ、2014年8月に突入した低下トレンドは維持した。

――米8月CPIはモノのほか医療費が1984年以来の水準へ跳ね上がったため力強い伸びを記録したものの、米8月PPIや米8月輸入物価指数を振り返るとインフレが高進する気配は見られず。9月20~21日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文でインフレの文言を訂正しなかったのは、米8月CPIの上振れが一時的と判断したからでしょう。

(カバー写真:worldoflard/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年9月23日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。