「努力が報われない社会」から脱出する方法

内藤 忍

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横浜市が実施した2016年度の市民意識調査で「今の世の中は努力すれば報われる社会だ」という質問に対して、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した人の比率は15.2%と、1988年度の44.2%と比較して29%も低下したことが、話題になっています。

同じ質問に対して「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」の合計は43.4%と半数近くに達しています。これは横浜市だけではなく、日本全国に共通した傾向だろうと推測できます。

1988年はバブルの絶頂期ですから、日本全体がポジティブなムードに包まれていた絶頂期です。その後「失われた20年」を経て低成長が続く日本にいれば閉塞感から希望を失うのは仕方ないのかもしれません。

しかし、振り返ってみるとバブルの時期も努力が報われていたとは、私にはあまり思えません。市場全体のパイが拡大し、誰でも成長の果実を手にすることができた時代だったので、努力するしないに関わらずある程度の成果を得ることができたと考える方が自然です。例えば、今成長しているフィリピンやベトナムに行けば、努力は報われると感じるはずです。要するに、社会の変化を自分の努力による成果と勘違いしていた可能性が高いのです。

1人の人間が自分の能力でできることは限られています。努力することは大切ですが、それ以上に「どこにいるか」が結果を左右するというのが現実なのです。

例えて言えば、風が吹いていないところでは、最新鋭の船が帆を立てても動きません。でも、風が吹いているところに船を持っていけば、例えそれがボロ船であっても、それなりに前に進むのと同じことです。

そう考えると、努力が報われないと嘆く前にやるべきことが見えてきます。それは自分が今いる場所には「追い風が吹いているか」自問してみることです。努力がから回りする場所でもがいても、これからも結果は出ないからです。

例えば・・・
衰退する業界の大手企業で働くよりも、成長分野のベンチャーでチャレンジしてみる。
成長率の低い国内で仕事をするよりも、年率7%で経済成長する新興国で仕事を始めてみる。
競争の激しいレッドオーシャンな仕事から、競合の少ないブルーオーシャンな仕事に転職する。

「自分が何をするか」よりも「自分がどこにいるか」が結果を左右することを理解すれば、現状を否定するネガティブ思考から、自分のこれからをポジティブに考えられるようになると思います。努力が報われるチャンスは、世界中にたくさん転がっているのです。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年9月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。