<都議会議員三ツ星評価>三ツ星議員は民進1人のみ

高橋 亮平

三ツ星議員は民進1人のみ、二ツ星は共産3人+民進・かがやけ各1人

小池知事誕生以来少しずつ関心の高まりつつある都議会。

メディアでも注目される知事に比べ、有権者からも実際にはどういった活動をしているかすら分かり難い議会。

今回は、本会議での代表質問、一般質問、さらに文書による質問である質問趣意書の3項目について、それぞれ各分野のBest10に星を付け、三ツ星★★★で全都議会議員を評価してみた。

データの対象としたのは、前回の都議会選挙が行われて以降の2013年第3回定例会〜2016年第2回定例会までの3年分。

127人の都議会議員の中で、代表質問が1回で10位、一般質問が4回で1位、文書質問趣意書が7回で2位と、その全ての項目で10位以内となり三ツ星の評価を得た議員は、都議会民進党の中村ひろし氏(三鷹)ただ一人だった。

次いで二ツ星議員★★となった議員は5人。うち3人は共産党の議員だった。

尾崎あや子氏(北多一・1回10位・2回51位・6回5位)、河野ゆりえ氏(江戸川・1回10位・1回74位・5回8位)、畔上三和子氏(江東・1回10位・0回98位・5回   8位)に加えて、都議会民進党の斉藤あつし氏(小平・2回5位・1回74位・6回5位)、かがやけ Tokyoの上田令子氏(江戸川・0回31・4回1位・7回2位)と並んだ。

ちなみに今回の評価で★を獲得した議員は45人。

会派別に見ると、最も多かったのが日本共産党東京都議会議員団で13人。次いで、都議会公明党の9人、東京都議会自由民主党と都議会民進党が6人、民進党都議団と都議会生活者ネットワーク、かがやけ Tokyoが3人で並び、無所属が2人だった。

三ツ星では民進党都議団が100%、二ツ星でも日本共産党東京都議会議員団60%、と都議会民進党とかがやけ Tokyoが20%と当時の知事野党的な会派に限定されていたが、一ツ星になると日本共産党東京都議会議員団26%と最も多いものの、次いで都議会公明党が23%とほぼ変わらず、東京都議会自由民主党も15%を占めるなど当時の知事与党的な立場を取っていた政党も多くなる結果となり、この点では、国政などでの議会の活動データ結果とは異なる結果となった。

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代表質問・一般質問・文書質問趣意書にそれぞれ制度の特徴がある

こうした背景には、代表質問、一般質問、文書質問趣意書といった質問形式によって異なる制度なども影響している。

会派別活動データを見てもらうと分かりやすいが、代表質問を見ると、東京都議会自由民主党こそ市長選挙などでの辞職により議員が減っていることで質問回数が減っているが、会派規模が上位4つの会派にしか質問が保障されていない仕組みがあることがこうしたデータ上からも分かる。

一方で、質問することに制限がほぼない文書質問趣意書については、与党的な立場を取ってきた東京都議会自由民主党や都議会公明党はまったく行っていないということが分かる。

本来地方議会においては与野党というのはおかしい部分もあるが、ここでは便宜的に構造を理解してもらうためにそう説明することとしたい。

一般質問については、会派規模などによって時間配分されて行われる形であるため、議員数の多い東京都議会自由民主党の質問回数が最も多くなる一方で、一人当たり平均で出すと一転、都議会生活者ネットワークが4.0回でトップとなり、次いでかがやけ Tokyoが3.7回、民進党都議団が3.5回と少数会派が逆転する。

ここで面白かったのが、三ツ星評価で圧倒的に多かった日本共産党東京都議会議員団だが、一般質問の一人当たり平均回数になると一転0.9回となり一気にビリになるほか、この分野ではBest10に一人も入っていないのだ。一般的に全国の地方議会において「共産党は発言が多い」という印象があったので、この結果は意外だった。

逆に文書質問趣意書については、日本共産党東京都議会議員団の回数が圧倒的で、1つの会派での回数が残りのすべての会派の合計回数を超えた。

ただ、ここも一人当たり平均回数になると逆転し、かがやけ Tokyoが平均5.3回なのに対し、日本共産党東京都議会議員団は3.2回に過ぎない。

 

任期中どの質問形式でも質問してない「オールゼロ議員」も16人

こうしたデータを調べてみると、改めて、任期中どの質問形式でも質問してない「オールゼロ議員」が16人もいることも分かった。

議長や副議長などは、質問することは事実上できないわけだが、それでも127名いる都議会議員の12.6%というのは多くないだろうか。

この中には、知事選の際に噂になったあの議員なども含まれる。

会派別に見ると、こうした「オールゼロ議員」は規模が大きい順に3つの会派に限られ、その人数も会派規模順になっている。

最も多かった東京都議会自由民主党が11人と会派内の18.3%を占め、「オールゼロ議員」の68.8%と圧倒的だった

次いで、都議会公明党が4人で会派内の17.4%で25.0%となるのだが、日本共産党東京都議会議員団の中にもこの「オールゼロ議員」がいたのには驚かされた。

 

都議会のブラックボックスを開けたら都議会議員からご批判をいくつも・・・

先日、『注目の都議会、データで見る全議員の実力。質問ゼロ議員も!<都議会議員活動データランキング>』( http://blog.livedoor.jp/ryohey7654/archives/52067739.html )と題して都議会の質問回数についてコラムを書いたところ大きな反響をいただいた。

これまで注目を浴びることのあまりなかった地方議会にスポットライトを当てようというものであり、こうした皆さんの反応はありがたいばかりだ。このコラムもキッカケに地方議会の現状と課題を共有してもらうい、さらに関心につながればと思う。

しかしそんな一方で、先日のコラムに関して、都議会議員などからいくつものご批判もいただいているという。

議会についてこういったコラムを書くと、必ずと言ってもいいほど、当事者の議員たちからご批判をいただく。得てして批判をしてこられるのは、自分たちの既得権に入ってくるなという方々や、こうしたデータを出した際に評価の低い議員だったりする。

多くの場合の批判は、「この評価基準では議員の評価はできない」というものであるが、筆者自身もこのデータだけで全ての評価ができると思っているわけではない。

ただ一方で、議会については、これまで関係者や経験者でないと何をやっているのかさえ分からないブラックボックスでもあり、表に出ているデータも少ないという事も理解してもらわないとならない。

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国会議員三ツ星評価は国会議員の活動も変えた

2014年1月にジャーナリストの田原総一郎さんを会長に政府や政策、議会などを監視するNPO法人万年野党が立ち上がった。筆者自身も事務局長として設立に携わった。このNPOでは国会議員を活動データに基づいて評価する「国会議員三ツ星評価」を行っている。2013年12月に同年1〜6月に行われた通常国会の活動データを元に「第183国会版 国会議員のデータブック」を発行。以後、国会会期ごとに作成している。

ここで行った国会議員三ツ星評価は、国会議員の質問回数、文書質問である質問主意書の提出回数、議員立法の提案回数の3項目で、衆議院についてはこれに質問時間数も加え、それぞれの項目の上位者星1つを付け、最大星3つとして、国会議員の三ツ星評価を行っている。

これまで多くの人にとって「一流国会議員」とは、大臣経験者なども含め「テレビによく出ている国会議員」であったが、こうした指標を加えることで、特にこれまで注目されることのなかった国会で地道に活動する若手中堅議員などにもスポットライトが当たるようになった。議員の中には自らを「三ツ星議員」、「二ツ星議員」として地元や選挙の際などに使う議員まで出てきたほか、これまであまり利用されてこなかった質問主意書を活用するようになる議員が出てくるなどもした。

もちろんこうした活動に対して「議会活動を量で評価すべきではない」との批判ももらった。

同時に質の評価も行うなど多角的な評価も行ったが、データに基づく客観性という意味では、量の評価には一定の価値がある。

 

量による評価からでもブラックボックスである地方議会をオープンに

今回は、都議会においては議員立法が少ないため本会議での代表質問、一般質問、さらに文書による質問である質問趣意書の3項目での評価を行ったが、これは一つのモデルケースに過ぎない。

今後は、さらに地方議会の評価についても制度を上げていかなければならないと思うが、こうして地方議会が注目される機会にこそモデルを作りながら、全国にこうした評価を広げていければと思う。

進化の遅れた政治の世界の中でも、特に地方議会の現場は、そのブラックボックス化により、世間の常識から乖離したものになっている部分も多い。

地方議員時代、超党派地方議員400人の会である全国若手市議会議員の会の全国会長を務め、一方で東京財団の研究員として2008年に国内外の事例を研究しながら地方議会改革を行っていたことを思い出す。

今一度、地方議会については改革していく必要を強く感じる。

こうした改革には、もちろん内部からの自浄作用についても期待したいが、同時に有権者である多くの人たちがチェックをし、メスを入れていく必要も感じる。

関心の高まり難い地方議会だからこそ、その中身をできるだけ分かりやすい形でオープン化していくことが重要なのではないかと思う。

 

高橋亮平(たかはし・りょうへい)

中央大学特任准教授、NPO法人Rights代表理事、一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、千葉市こども若者参画・生徒会活性化アドバイザーなども務める。1976年生まれ。明治大学理工学部卒。26歳で市川市議、34歳で全国最年少自治体部長職として松戸市政策担当官・審議監を務めたほか、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員等を経て現職。世代間格差問題の是正と持続可能な社会システムへの転換を求め「ワカモノ・マニフェスト」を発表、田原総一朗氏を会長に政策監視NPOであるNPO法人「万年野党」を創設、事務局長を担い「国会議員三ツ星評価」などを発行。AERA「日本を立て直す100人」、米国務省から次世代のリーダーとしてIVプログラムなどに選ばれる。テレビ朝日「朝まで生テレビ!」、BSフジ「プライムニュース」等、メディアにも出演。著書に『世代間格差ってなんだ』、『20歳からの社会科』、『18歳が政治を変える!』他。株式会社政策工房客員研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員も務める。

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