朝日と毎日のすり替える二重国籍問題

池田 信夫

二重国籍を認める国(緑)と認めない国(赤)



門田隆将氏のコラムで知ったが、朝日新聞と毎日新聞がわかりにくい表現で二重国籍を擁護している。朝日は国籍法違反を擁護して批判を浴びたので、松下秀雄編集委員は「『純粋な日本人』であることは、それほど大切なのだろうか?」と問題をすり替えている。日本国籍は「純粋な日本人」を示すものではなく、国籍法は台湾系の日本人を排除してもいない。二重国籍を認めるかどうかは一長一短で、図のように世界的にも半々だ。

毎日新聞の与良正男編集委員はこう書く。

蓮舫氏が首相になって、仮に日本と台湾との間で紛争が起きた場合、台湾人を父に持つ蓮舫氏が日本を守れるのか、と。でも、この論法で言えば蓮舫氏が台湾籍をちゃんと抜いたとしても、彼らは同じ疑念を言い続けるのではなかろうか。

八幡さんも私も「台湾人を父に持つ蓮舫氏が日本を守れるのか」と言ったことはない。生まれた父親を選ぶことはできないので、それを根拠に「疑念」を言うのはおかしい。日本も1984年までは父系血統主義だったから蓮舫代表は自動的に台湾籍になったが、85年に国籍法が改正されて彼女は日本国籍を取得した。

そのとき「台湾籍をちゃんと抜いた」という彼女の話が嘘だったから、われわれは問題にしているのだ。これは与良氏のいう「国家を優先するのか、個人を優先するのか」という話とも無関係だ。たとえばイスラエルとシンガポールの二重国籍だと、18歳になった男性は全員イスラエルで3年間、シンガポールで2年間、徴兵される。国籍は個人の最大の問題なのだ。

二重国籍の人は外交官になれない(本来は自衛官にもなれないが明文の規定はない)のだから、首相にも外相にも防衛相にもなれないのが当然だ。蓮舫氏が批判を浴びているのは、「首相をめざす」という人物が国籍を偽って国会議員に当選し、それを指摘されても嘘をつき続けたからだ。

さすがに朝日も毎日も、正面きって「国籍法違反は悪くない」とは言えないので、「やはり根底には純血主義や排外主義、民族差別意識があると感じる」といった印象論で逃げている。そう感じるのは自由だが、その印象に根拠があるなら論理的に表明し、誤った印象なら是正するのがジャーナリズムというものだろう。