フィリピンのドゥテルテ大統領が、強行している麻薬撲滅対策は、世界中から批判を浴びていますが、大統領自身は、その批判を真摯に受け入れることなく、すでに2400人もの麻薬犯罪容疑者が殺害されたという報道があります。
さらに本日の報道で、ついには、「ヒトラーは、300万人のユダヤ人を虐殺した。フィリピンには、300万人の薬物中毒者がいる。わたしは、喜んで彼らを虐殺する」とまで発言したとのことで、ユダヤ人団体をはじめ、非難が相次ぎました。
この政策には私も心を痛め、成り行きを見守っておりますが、この様な非人道的な政策を、「素晴らしい!支持する!」と表明した日本の著名人がいらしたことに大変驚愕致しました。
それは既にご存知の方も多いかと思いますが、高須クリニックの院長、高須克弥先生です。
高須院長の番組での発言はこちらにまとめられていますので、
ご覧下さい。
おっしゃっていることが支離滅裂ですが、でも院長はどうやら本気で、麻薬で多くの人が死ぬと懸念しながら、麻薬犯罪者を殺しても構わないと思っていらっしゃるようです。
そして院長は、「こういう政治家日本にも欲しいですね」と、おっしゃっています。
最初は冗談かと思っておりましたが、どうやら本気で院長はそう思っているらしく、私がツイッターで、「世界の様々な国が、麻薬撲滅対策に邁進し、薬物依存症からの回復のために尽力している。それを、殺害という解決策をとるドゥテルテ大統領を支持するとは、高須院長は医者のくせに依存症のことを知らないのだろうか?薬物依存からの回復を願い、奔走する家族の気持ちを考えないのだろうか?」
とツイートすると、こんなリツイートを返して来られました。
で、何故私のツイッターをリツイートされたかと言えば「お前のことなどなんとも思わん」とのことだそうで、てっきり、この発言は、高須院長独特の全くウケないブラックユーモアなのかと思っていた私は、「高須院長、本気ですか?本気でこの政策を支持されているのでしょうか?」と、ツイッターではなく、リアルにつぶやいてしまいました。
犯罪を犯した者に対し、暴力やまして殺害などという方法で、対処しようというのは、法治国家の取るべき態度ではありません。そんなことは日本で暮らす人は、誰でも知っていることだと思っておりました。
人権は誰の上にもあります。薬物犯罪を犯した人の上にも当然にあるものです。
ましてや適切な支援さえあれば、薬物犯罪から人は更生することができます。
犯罪を犯した人が、薬物依存症者であれば、回復の道があります。
何よりも薬物犯罪を犯した人にも必ず家族がいます。
その家族は、本人の更生や回復を心から願っているはずです。
それは、この夫の死体を抱きしめる、奥様の姿にも現れています。
この写真を見てもなお揶揄する、ドゥテルテ大統領。
そしてその人を支持する高須院長。
「あなたは人を美しく変身させることが仕事ではないですか?」
と、改めて問いたいです。
私には、薬物依存症からの回復を願う、薬物依存症者を家族に持った仲間が沢山います。
私は、どんな逆境にあっても、希望を捨てずに、他の仲間と助け合い、前を向く仲間達の気持ちを、本当に美しいと思っております。
あなたの追及する美は、見せかけのものだけで、構わないのでしょうか?
美しさを追求するお仕事に就かれているのであれば、家族の忍耐と、ひたむきさと、そして友情に満ちた美しい心を無神経に傷つけるような発言は、慎むべきと思います。
皆さん、長い苦しみのトンネルを忍耐して進んでいるのです。
またテレビ界の皆様に心からお願いしたいのは、世界の多くの国々が地道な努力をし続ける薬物問題に対して、誤解や時代を逆行させるような恐れのある、高須先生のような無理解な発言者を、登場させないで欲しいと、切に願う次第です。
編集部より:この記事は、一般社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2016年10月2日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。