【映画評】世界一キライなあなたに

Yo antes de ti/ Me Before You

イギリスの田舎町に住むルーことルイーザは、26歳、独身の女性。ある日、突然失業したことをきっかけに、交通事故で車椅子生活になって生きる気力を失った青年実業家ウィルの介護と話し相手をする、期間限定の職を得る。冷淡な態度のウィルにとまどうが、ルーは次第にその明るい性格と前向きな生き方で、ウィルの頑なな心を溶かしていく。自然と互いに惹かれあうようになった2人だったが、ルーはウィルのある重大な決意を知ることになる…。

車椅子生活の青年と、彼の介護に雇われた女性の恋を描く「世界一キライなあなたに」。原作は、泣かせる恋愛小説の旗手、ジョジョ・モイヤーズのベストセラー小説「ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日」。難病もの、身分違いの恋、青年の重大な決意とその後の大きな愛など、涙腺を刺激する要素が満載だ。ルーは、ファッションに携わる仕事につくことを希望しながら家族の失業のため家計を助けていて、自分の夢に突き進むことができずにいる。一方、城を所有するほどの大富豪のウィルは、以前は恋に仕事にスポーツにと前向きに生きていたが、身体障害というあまりにも重い十字架を背負ったことから生きる気力を失っている。

ルーの夢の前に立ちふさがる経済的な困難がリアルだが、ルーとウィルの美しい思い出作りも、ウィルが下す決断もまた経済力失くしては成しえないもの。形は違えど二人の前に横たわる問題を解決するのは、良くも悪くもお金というのが切ない。ウィルが下した決断には、賛否両論があるだろう。その重大すぎる決心は、生と死、自分らしい生き方など、改めて映画を見る人ひとりひとりに問いかけてくる。

それはそれとして、ヒロインを演じるエミリア・クラーク演じるルーの、超・個性的な服装には目がテンだ。ファッションの仕事をしたいという彼女のこのクセがありすぎるセンスに、しばし唖然。この人がファッションの仕事についていいものか…と、余計なお世話だが心配になる。決して絶世の美女でもなく、スタイルがいいわけでもないクラークは、くるくると変わる表情が魅力的な女優だ。彼女のはじける笑顔が、見終わった後、目に焼き付いていた。
【60点】
(原題「ME BEFORE YOU」)
(アメリカ/テア・シャーロック監督/エミリア・クラーク、サム・クラフリン、ジャネット・マクティア、他)
(重大決心度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年10月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。