米8月個人消費と個人所得、2016年の成長鈍化を示唆

8月個人消費

米8月個人消費支出は前月比±0%と、市場予想の0.1%増に届かなかった。前月の0.4%増(0.3%増から上方修正)を下回り、増加トレンドを4ヵ月で止めている。4月に1.0%増と2009年8月以来の高水準を果たした水準で、一旦頭打ちとなった格好。米4~6月期国内総生産(GDP)の確報値から、鈍化の可能性を示す。前年比では3.6%増と前月の3.8%増を下回ったが、2015年の平均値3.6%増に並んだ。実質の個人消費は前月比で0.1%減と、市場予想の±0%から弱含んだ。前月の0.3%増から減速している。

個人消費の内訳は、前月比で以下の通り。耐久財は、新車販売台数が8月に再び減速した影響を背景に減少に転じた。非耐久財は原油先物の上昇が一服した影響でガソリン価格が伸び悩み、2ヵ月連続で減少。サービスは底堅さを維持した。

・モノは0.58%減、前月の0.31%増から転じ増加トレンドにブレーキ
>耐久財 1.30%減、前月の2.08%増から転じ3ヵ月ぶりに減少
>非耐久財 0.19%減、前月の0.60%減を含め2ヵ月連続で減少
・サービス 0.34%増、前月の0.38%増と合わせ5ヵ月連続で増加

米8月個人所得は前月比0.2%増と市場予想と一致し、前月の0.4%増を下回った。ただし、6ヵ月連続で増加。前年比は3.1%増と7月の3.2%増を下回り、4~6月の水準に並んだ。可処分所得は前月比で0.2%増と6ヵ月連続で増加。所得の支出の伸びを下回ったため、貯蓄率は5.7%と前月の5.5%から上昇し5月の水準へ戻した

個人消費の低迷に反し、個人所得は順調で貯蓄率が上昇。

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(作成:My Big Apple NY)

所得の内訳は、以下の通り。

・賃金/所得 0.1%増、前月の0.5%増と合わせ6ヵ月連続で増加(民間が0.1%増と前月の0.5%増から鈍化。製造業、鉱業、建設など財部門が0.4%減と前月の0.7%増から減少に反転。特に製造業が0.4%減と下げ幅が大きい。サービスは0.2%増と前月の0.5%増から鈍化)。
・不動産収入 ±0%、前月の0.1%増から転じ増加は2ヵ月でブレーキ(農場が1.4%減と減少トレンドを維持した一方、非農場は0.1%増と3ヵ月連続で増加)
・家賃収入 0.7%増、前月の0.5%増に続き30ヵ月連続で増加
・資産収入 0.5%増と前月の0.3%増と合わせ2ヵ月連続で増加(配当が0.8%増と前月の0.3%増を含め2ヵ月連続で増加、金利収入は0.3%減と8ヵ月ぶりに減少)
・社会補助 0.4%増、前月の0.4%増と合わせ少なくとも21ヵ月連続で増加
・社会福祉 0.4%増、前月の0.4%増と合わせ増加基調を維持(メディケイド=低所得者層向け医療保険が0.7%増と4ヵ月連続で増加、メディケア=高所得者向け医療保険は0.3%増と増加トレンドを維持、失業保険は0.7%増と前月分の減少を相殺)

米8月個人消費支出(PCE)デフレーターは前月比0.1%上昇し、市場予想の0.2%の上昇以下にとどまった。前月の±0%に及ばず。ただし前年比は1.0%上昇し、市場予想の0.9%及び前月の0.8%を上回った。コアPCEデフレーターは前月比0.2%上昇し、市場予想に並んだ。前月の0.1%から加速している。コアPCEデフレーターの前年比は7月まで5ヵ月連続で1.6%を経て、今回は1.7%の上昇。市場予想通りであり、四捨五入前では1.69%の上昇と2014年9月以来の高水準を遂げた。PCEとコアは米連邦公開市場委員会(FOMC)の目標値「2%」を視野に入れつつ、2012年5月以来の「2%」割れを続けている。

――インフレが足元恩トレンドから脱し上向きの予兆を示すと同時に、個人消費は小幅ながら鈍化しました。米9月消費者信頼感指数米9月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値で、購入見通しが低下しインフレ見通しが低下した結果と整合的。個人消費の前年比が順調に増加する一方で、個人所得の伸びがさえない点も気掛かりです。実質ベースで年初来の個人所得の前年比・平均値が2.4%増だった半面、2015年平均値は4.0%増でした。個人消費支出も年初来の平均値が2.6%増と、2015年の平均値3.2%増と個人所得ほどではないにしても鈍化が目立ちます。貯蓄率が年初の6%台から低下したように、貯蓄を削って消費にまわした可能性すら浮上するほど。米4~6月GDP確報値での勢いを維持できそうにありません。

アトランタ連銀は、9月30日時点で米7~9月期GDP予測値を従来の2.8%増から2.4%増へ引き下げました。NY連銀も従来の2.3%増から2.2%増へ下方修正。NY連銀は米10~12月期GDP予測値は1.2%増で据え置きだったほか、米1~3月期GDPが0.8%増、米4~6月期が1.4%増だったため、2016年成長率は2%割れの可能性が強まってきました。国際通貨基金(IMF)の7月版・世界経済見通し(WEO)が2016年成長率の予想を2.4%増としていたため、少なくとも今年については引き下げを余儀なくされそうです。

(カバー写真:Dave Collier/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年10月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。