豊洲移転問題を見据えた世界一の魚の町の新たな取組

井上 貴至

豊洲移転問題の長期化に象徴されるように、築地市場の機能の衰えが顕在化しています。そうした状況の中、水産業が生き残るためには、直売の拡大や個人向けブランドづくりが不可欠です。

世界一のブリの町である「鹿児島県長島町」では、昨年度、日本で初めて、漁協として株式会社JFA(=Japan Food Aritisan)を設立し、直売の拡大や個人向けブランドづくりに向けて、

●ネット版道の駅「長島大陸市場」の開設
●漁港で新鮮な魚料理などを提供する「長島大陸市場食堂」のオープン
●東京都心を走るキッチンカー「長島大陸ブリうま食堂」のオープン
●生産者のドラマを描いた雑誌とともに食材を届ける「長島大陸食べる通信」の販売
●辻調理師専門学校とれんけいした「シェフと生産者交流事業」

などの取組を、スピード感を持って精力的に行っています。 「長島大陸ブリうま食堂」で定期的にお弁当を購入するお客さんや、シェフ交流事業で長島町を訪れたシェフが、ネット版道の駅「長島大陸市場」で魚介類やバーベキューセットを購入するなど各事業間の連携も進んでいます。

そして、今回新たな取組が!

「ぶりさばき」

体験し、動画を制作した東京大学文科一類2年の平田拓也君に寄稿してもらいました。

はじめまして、この度三週間ほど長島町にお邪魔させていただいた東京大学文科一類2年の平田拓也と申します。

今回私は長島の鰤王のさばき方を録画した動画を撮影・編集して、YouTubeに投稿しました。また、動画のデータを役場・漁協に提出して今後の販売戦略に役立てていただけるようお願いしました。

長島町はご存知の通り、ブリの町です。東町漁協は鰤王というブランドで世界各地に売り出しています。従前の卸売りだけでなくブランド価値をつけるため新たにJFAという株式会社を組織してネット通販や移動販売を行っています。

ネット通販するとき、JFAではフィレと呼んでいる半身のパック詰めの形で販売することが多いですが、鰤ほどの大きさになるとそこからでも調理が難しく、特に皮を剥ぐ工程は知らなければ手が出ないのではないかと思います。

そのため、フィレの状態から刺身用・ブリかつ用・照り焼き用の切り身にするまでを録画・編集することにしました。

なにぶん、鰤をさばいたことが一度もなかったのでどこがどう難しいのか全く分からない状態でした。そこでJFAの方の協力を得て、長島大陸市場食堂でアルバイトしながら鰤のさばき方を教わりました。正直、難しかったです。特に包丁が思ったように入らないことたるや...

食堂で働いてみて一番嬉しかったのは、観光客の方に料理を褒めてもらったときかなと思います。何をしたわけでもないけど島外の方に「料理がおいしい、また来るよ」と言ってもらえるなんて素晴らしいことだなと思います。実際、同じ長島でも食堂は一番新鮮ですから本当においしいです。東京に帰ってみて長島の味が恋しくなっております。

話は変わりますが、「地方創生っ て何だろう?」、このテーマをもって私は長島町で過ごしました。役場の方々にとっての地方創生、事業者にとっての地方創生、私にとっての地方創生、これら を一つずつ確かめていこうと思って、長島町を見てきました。役場に行き、商工会に行き、漁協に行き、地元の方と触れ合って、その結果見えてきたのは、自分が何も知らなかったということでした。

私のイメージでは役場が旗手となって住民を先導しているように思っていましたが、実際には商工会や漁協などの団体に加えて事業者の方々も地方創生事業を推し進めていて「地方創生=役場の仕事」という勝手な想像を抱いていた自分を反省しました。

私は井上副町長と同じゼミに所属しており、様々な社会問題の当事者からお話を伺ってきました。地方創生というテーマについても様々な立場の方々からお話を伺っていて、わかっていた気になっていたのかもしれません。

地方創生なんてかっこいい言葉を使うから、新たな産業の育成だとか都市計画だとか壮大なものを思い浮かべてしまうけれど、本当のところ住民が暮らしやすい街をつくることができればそれは全部地方創生事業なんじゃないのかなという結論にいたりました。

雇用の確保も親密なコミュニティの育成も結局は「住民の暮らしやすい街をつくるための一要素」だと。そう考えると少し楽に考えられるようになった気がします。

最後となりますが、井上副町長をはじめとした役場のみなさま、長い間親身になってくださったJFA・東町漁協のみなさま、商工会のみなさま、そして自転車をお貸しくださるなどお世話になりました長島町の方々、大変ありがとうございました。

長島町で学んだこと、感じたことを少しずつ生かしていけるよう一歩ずつ進んでいこうと思います。

平田君が制作したぶりさばき動画はこちら!

照り焼き用

刺身用

ぶりかつ用

ぶりさばきを教育や観光にも積極的に生かしていきたいです。

<もっと長島大陸と関りたい!
《買いたい》
●大陸の素晴らしいものを直送します。「長島大陸市場」
http://nagashimatairiku.com/

●かっこいい長島をお届けしたい!長島大陸食べる通信。

http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68480758.html


《参加したい》
●地方創生の象徴:食べる通信」編集会議に参加してみませんか。
次回は10月26日(水)9時30分〜
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68538693.html

●10月17日(月)朝8時30分〜
「旅は最高のリハビリ」篠塚恭一さんが長島大陸で講演します。
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68584039.html


《住みたい》
●集え!大学生~できるまで帰れません!
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68537755.html

●田舎暮らしはキャリアアップ!長島大陸で働く仲間を募集中。
 http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68471295.html



<井上貴至(長島町副町長(地方創生担当)プロフィール>
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68458684.html

公私一致」という働き方
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68507744.html


編集部より:この記事は、鹿児島県長島町副町長、井上貴至氏のブログ 2016年10月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『「長島大陸」地方創生物語~井上貴至の地域づくりは楽しい~』をご覧ください。