弁護士が主張する人生に必要なPPKとATIとは

大竹

講演中の大竹夏夫弁護士。

読者の皆さまは、PPKをご存知だろうか。頭文字をとってPPKと略す。映画好きな方は『007シリーズ』の主人公ジェームズ・ボンドが使用するワルサーPPKを思い浮かべたかも知れない。なかには、「パチンコ、パチスロ、競馬」という方もいるかも知れない。

知人の大竹夏夫弁護士(以下、大竹)が7月に上梓した『老活弁護士(R)が教えます! わかりやすい遺言書の書き方』 (QP Books)がいま話題になっている。今回は、「老活」(老後に備える準備活動)をテーマに話を聞いた。

■PPKとATIの実現には「お喋り」が必要

日本は世界一の長寿国だが、亡くなる直前まで元気に活動している人は少ない。亡くなる直前まで元気に活動している人のことを、ピンピンコロリ(PPK)と称する。また、病気や事故で寝たきりで亡くなることを、ネンネンコロリ(NNK)と称するようである。

「ピンピン生きて、最後にコロリと亡くなる(PPK)。これは理想的な生き方だといえます。ところが、8割程度の方は、病気や事故で寝たきりで亡くなるという統計もあります。PPKを実現するためにはATIが必要になります。」(大竹)

「ATIとは『明るく、楽しく、愛をもつ』という意味です。生きがいといえば分かりやすいでしょう。定年退職をして家にいると邪魔扱いされてやることもない。これは好ましくありません。しっかり長生きするためには、生きがいが必要になります。」(同)

次に、生きがいについて、出身大学の事例を踏まえて分かりやすい話をしてくれた。

「私の出身大学の明治には連合駿台会というOB会があります。会合に参加してみるとメンバーのほとんどは、60代~70代の男性がほとんどです。びっくりしたのは、50名ほど集まったメンバーのほぼ全員が、べちゃくちゃ喋っているのです。元気なおじさんが大勢で喋っている光景は威容です。」(大竹)

「この会は、中小企業の元社長や大手企業の元幹部などが多いことが特徴です。いただいた名刺を見ると肩書が3つ4つと載っています。会社は退いても、いろいろなところで活躍されている。当然そうしたお付き合いでしゃべることが多い。元気だからこそ、この会に参加しているともいえるのです。」(同)

生きがいを見つけることの大切さが分かる。さらに、べちゃくちゃ喋ることの効能もありそうだ。大竹は「お喋り」の効能について次のように述べている。

「日本は女性が長生きします。いろいろ要因があると思いますが、大きな要因となっていると思うのが『お喋り』だと思います。だいぶ前にCMで有名になった『きんさん、ぎんさん』の姉妹をご存知でしょうか。テレビなどで紹介されていました。その秘訣が『お喋り』です。毎日集まって何時間もお喋りをするらしいのです。」(大竹)

「先日、妻と娘と池袋東武の喫茶店にアフタヌーンティーに入りましたが店内のほとんどが女性。2人組、3人組、いずれにせよ、べちゃくちゃ喋っています。うるさくて娘の声が聞きづらいくらいです。いい意味で女性はお喋りだと実感しました。」(同)

そして、生きがいのある人生を送りながら、「老後に備える準備活動」(老活)をすることの重要性を、大竹は主張する。最も大切なのが「遺言書の作成」とのことだ。

■遺言書があれば不毛な争いを避けることができる

遺言書は先送りしがちで、書くとなるとなかなか進まない。大竹は「すべての人が遺言書を書く。それが当たり前の社会になることが理想である」と述べている。遺言書を書く際に留意すべきは遺留分の問題である。

遺留分を考慮しないと様々なリスクが発生する。例えば、子供がいない未亡人のケースで残された妻が夫の兄弟姉妹と遺産相続協議をするのは大変な精神的苦痛が生じる。生前に「妻に全ての財産を相続させる」と遺言書を残しておけば不毛な争いを避けられるはずだ。

「自分が残す財産やその他のことを死ぬ前に決めておく。これは実は当たり前のことだと思うのです。残された人のために、周りの人のために、そして、なによりも自分のために、『遺言書』を書いていただきたい。」(大竹)

なお、法律家の書いた書籍は難解で読みにくいものが少なくないが、本書は平易な表現で分かりやすい。『老活』を簡単に理解したい人におすすめしたい。

尾藤克之
コラムニスト

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