埼玉県知事選挙の際に自民党埼玉県連の会長の新藤義孝元総務大臣が街頭演説で熱心に訴えてきた上田県政の不都合な真実という話がある。
あくまで街頭演説の話で、選挙ビラには書かれていたことだが、新藤さんの選挙演説を聞いたことがない人には、え、まさか、と思うような初耳のことだったが、自民党の国会議員として長年国政に携わっているベテラン議員の人たちにはさぞ不思議なことだったのだろう。
埼玉県の知事は、県政の課題について自ら永田町に陳情に来たことがない、全国の知事の中でも特別の存在だった、ということだ。
真偽のほどは分からないが、一度も自分では永田町や霞が関に予算の陳情には赴かないらしい、ということを聞くと、なるほど他の県と比較すると埼玉県の対応がどうも消極的と言うか、国から言われればやる、ぐらいの感じに映るのだろうな、と思ったものだ。
地方主権、地方分権の考え方を徹底しようという、如何にも元民主党出身の知事らしい振舞いだとは思うが、結局はこういう姿勢が国とのパイプをしっかり築こうとして日頃から熱心な陳情活動を続けている他府県に一歩遅れる結果になっている。
別に知事が国に対して格別の働きかけをしなくても、埼玉県は東京都に隣接する県として様々な施設整備や道路整備、鉄道網整備が進む恵まれた地域だから、それはそれで結構だと思うが、しかし他府県と激しく競合するような事業を抱えている時は微妙にこれがマイナスに働くことがある。
自民党の県議団と相変わらずしっくり行かないのにはそれなりの理由があるからだろうと思っている。
2020年東京オリンピック・パラリンピックの競技会場の選定や誘致合戦の中で、たまたま埼玉県のそのような基本姿勢が如何にも埼玉県はボート・カヌー競技会場の彩湖への誘致に消極だと映ったのだと思う。
東京都が競技会場の見直し作業を始めるという話は、小池さんが知事選挙に立候補した当時から関係者の間では話題になっていたのではないかと思うが、埼玉県はこういうことに鈍感だったのだったと思う。
宮城県知事は一生懸命走り回っていたが、埼玉県知事はただ傍観していた、ということだったのだろう。
小池さんからは何の打診もなかった、と上田知事は述べているようだが、ボートやカヌー競技の開催会場の移転がまったく決まっていないのに小池さんが埼玉県に打診することなどあり得ないわけで、まあ、これは仕方がないことである。
小池さんは今日宮城県を訪問して現地を視察するようだが、彩湖が最適地だと確信するのであれば、遅まきながらでもそうアピールすればいいだけの話である。
こういう時の物言いは、相当注意する必要がある。
君子は豹変すべし。
そう、申し上げておく。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2016年10月15日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は埼玉県庁サイトより引用)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。