9月13日の小池×村井会談は調査チームによる作業の一環

上山 信一
小池×村井

村井宮城県知事と会談した小池都知事(都庁サイトより:編集部)

調査チームが会場変更案を発表する前に小池知事が村井・宮城県知事と変更案について話し合っていた・・という報道があるが事実である。会談をアレンジしたのは調査チーム、私であり、都庁の担当部門でない。それで経緯を私から説明する。

1、調査チームの作業の中で長沼が候補地として挙がった。私は村井知事とは旧知の間柄。メールと携帯でやりとりし、村井知事に意欲があることを確認した。そこで次回上京時に小池さんに会ってもらうことにした。
2.9月13日小池×村井会談が実現し、私も同席した
3、お二人とも「調べてみないとわからないことが多いけれど前向きに検討してみたい」と。それで私は調査報告書に一つの選択肢として長沼を書いた

これは限られた時間の調査の中でスピーディーに結論を出すための当然の行動。実現可能性がないなら早く見切りをつける。そのため二人の知事の時間をいただき、感触を確かめさせていただいた。調査に協力いただいたお二人に感謝である。

これを「不透明」と批判する方がいると聞いて驚いた。

①地元の宮城県の知事の意向も確かめずに、長沼への会場変更の可能性の提案を都知事に提案できるだろうか?

②また、調査チームが「村井さん、興味あるようです」と言ったとして、都知事はそれをそのまま信じて、いいだろうか。誰が知事でも自分で確かめたいはずである(せめて電話をするなど)。

③調査チームの立場からしても長沼案のような大きな変更案は、双方の責任者(つまり両知事)の意向を確認しなければならない。なぜなら、本部会議は公開会議だからだ。所詮は調査チームの報告でしかないが、裏付けに基づいたものでなければ混乱を引き起こすだけである。

一連のプロセスを「不透明」と批判される方は、よほど普段から杜撰な仕事の仕方をされているに違いない・・。また、報告書の内容を読まずに批判されている(例えば、彩湖や長良川がほかの候補地として挙げられているという誤解)のかもしれない。

当たり前のことだが、現行計画はすでに進行中である。それをやめて他の場所にする提案だから、かなりハードルが高い。一部メディアは彩湖というが、今更、あそこを造成して新たに作るといった時間的余裕はない。長沼の場合、すでに国際基準のコースがあり、あとは周辺設備を作ればいいだけであり、過去の調査でもそれが明確だった。だから、唯一の候補地として長沼が上がったわけである。

各地の関係者が、「長沼が候補になるならうちも再考してほしい」と思われるのはわかる。しかし、このタイミングからの変更である。通常はありえない。しかし、長沼は
①復興五輪の原点に戻す
②現地の熱意
③コースの完成度
④過去の課題(道路、宿泊など)がたまたま解決できる状況になったこと
などの要素を総合判断し、熟慮に熟慮を重ねて提案したわけである。

だから村井知事の存在は大きい。ほかの要素は書類で説明すればわかるが、村井さんの熱意は小池知事とあってもらうのが早い。しかも今回は検討時間がない。

そこで、私は調査手法としては異例だが、小池知事に提案し、村井さんの上京機会をとらえて、都庁に立ち寄り、調査の一環として対談いただいたわけである。

だから、
①当然、秘密会談とせざるをえない・・調査チームによるオープン討議とした場合、熟度が低い段階で、事実上、長沼と提案したことになる

②小池知事としては村井知事の熱意を確かめたうえでなければ、調査チームに海の森を差し置き、長沼を提案させるわけにはいかない。混乱を引き起こすからだ。

③彩湖や長良川は、過去には候補地になったが調査チームは、開催まで4年を切った今からの代替候補地にはなりえないと考えている。だから小池知事が現地知事に「やりたいですか」と確かめる必要はないし、そのようにお願いした事実もない。

ちなみに、たまたま埼玉県知事に小池知事が会われたが、別に本件を話すためではない。調査チームも埼玉県知事の熱意を確かめていただく必要性を感じていなかったし、今もそうである。

ところで、「不透明」という批判に関してだが二人の会談の事実は30日の宮城版の朝日新聞に載っている。 9月29日のNHKニュースでも以下のように伝えていた。

村井知事は、今月(9月)中旬、東京都の小池知事とボートやカヌーの会場の変更について会談したことを明らかにした上で(以下略)

つまり、村井知事は、29日に調査チームの報告書が公表されると同時に取材で「13日に小池知事に会って話した」と答えられていた。私もメディアからの質問にそう答えていた。つまり、報告書の公表後は、両知事も私も13日の事前会談の事実を一度も隠したことはない。

要するに「不透明」というのは言いがかりでしかない・・。また、今になってあたかもスクープのように13日の会談を秘密会談があったと報じた読売、サンケイ、TBSなどの各社の記者さんには調査不足、勉強不足という印象を持たざるを得ない。また、組織委員会に頼まれて「不透明」と騒いでおられるのではないか、それこそ「不透明」な関係がそこにはあるのかもしれないと今後のお付き合いでは重々、気を付けていきたいと考えた(誰かと誰かを非難しているというニュースを流す場合は、きちんと両者に取材をして確かめてから書くべきである)。

ちなみに「不透明」といえば、組織委員会の武藤さんと森さんにはひと月以上前からインタビューの申し込みをしているが断られたままお返事がない。数日前にも部下の方にリマインドしたがお返事がない・・・実に不透明である。

何はともあれ、小池さんや村井さんは仕事が早い。そして、嫌なこと、つらいことから絶対に逃げない。それでいて配慮が行き届き、思いやりがある。そんなお二人と仕事をするのはとても気持ちがいい。

そして、今更の変更案にとまどいながらも誠実に対応いただいている都庁職員の皆さんには本当に感謝申し上げる。何年もかけて積み上げてきた海の森の計画を外から来た特別顧問や特別参与、あるいは新しい知事に否定されるのは耐え難いはずである。また、2014年に一度大きな見直しをしたので、またかという思いは察して余りあるものがある。

だが、オリンピックパラリンピック準備局のみなさん、都政改革本部の皆さんは、すべては、選挙の民意から始まる見直しであると理解し、知事の意向に従い、私たちの調査にも誠実に協力いただいている。まったく頭が下がる思いである。

そうした都庁職員の誠実さ、そして宮城県庁の知事以下の皆さんの熱意、地元の熱意、これらに支えられ、今、二つの選択肢はともにより磨かれ、よりよい内容になってきた。

長沼がでてきて、対比される中、現行の海の森の案でも一層のコストダウンの余地があると分かった。長沼もメディアからの厳しいチェックを受け、県庁と現地競技団体は、当初から極めて精度の高い調査をしている。両県職員の献身的なご努力に感謝を述べ、また連日連夜、取材をいただいているマスコミ各社の皆さんにもお礼を申し上げ、私のやや長い、経緯の説明を終えたい。


編集部より:このブログは慶應義塾大学総合政策学部教授、上山信一氏のブログ、2016年10月15日の記事を転載させていただきました(オリジナル記事が16日朝に大幅加筆されたため、本転載も再掲しました)。転載を快諾いただいた上山氏に感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、上山氏のブログ「見えないものを見よう」をご覧ください。