年利7.5%の米ドル定期預金のリスクはどこにあるのか?

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プノンペンも早くも最終日になりました。不動産の物件視察も終了し、私も所有している中心部にある稼働物件もしっかり管理されていることを確認しました。将来のキャピタルゲインを期待しつつ毎月のインカム収入が得られる物件として当面保有を続けるつもりです。

インカムと言えば、日本国内では定期預金の金利はほとんどゼロですが、カンボジアでは米国ドルの外貨定期預金の金利がかなり高く設定されています。プノンペン商業銀行などの通常の1年もの外貨預金金利は年6%程度ですが、サタパナ銀行のキャンペーン金利は1年もので何と7.5%です(写真)。

非居住者の場合ここから14%源泉徴収されますから、日本の居住者の場合、国内税率との差額約6%を日本で確定申告することが必要になります。それにしても、かなりの高金利です。

しかし、高いリターンの裏側には、リスクがあるというのが資産運用の世界の常識です。カンボジアの高金利預金の場合、リスクはどこにあるのでしょうか。

今年8月に発表された格付機関ムーディーズによる、カンボジアのソブリン発行者格付けは「B2」となっています。ムーディーズの格付は、最上級のAaa(トリプルA)からBaaまでの上位10段階は「投資適格」とされ、Ba(ダブルB)以下は「投機的」と分類されています。カンボジアは「B2」ですから、「投機的とみなされ、信用リスクが高いと判断される債務に対する格付け」と定義される「B」の真ん中になります。今後の見通しは安定的としていますが、投資適格になるまでにはまだかなりの時間がかかります。

経済成長率は高く、ここ数年安定していますが、産業構造が脆弱で縫製品や観光業に偏っていたり、一人当たりの所得がまだ低いといった問題があります。また、2015年に銀行貸付が23.4%も拡大し、そのうち約5分の1が建設・不動産向けであり、信用拡大のペースが速いことも懸念要因です。

高金利の銀行預金は、このようなカンボジアに対する信用リスクの裏返しで提供されていると考えるべきです。逆に言えば、このリスクを取っても良いという人にとっては良い資金の配分先となります。ただし、預金保険のような保証もありませんし、完全に自己責任で投資の最終判断ができる人に限定されます。

今日は自分自身の毎月入ってくる家賃の運用先として米ドル外貨預金の活用について銀行で話を聞いてみるつもりです。ちなみに、私はカンボジアでも国内同様金融商品の勧誘は一切行っていません。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年10月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。